まだ終わらない。4人目も作ってしまう。妊娠がわかったときに考えたことは中絶ではなく、流産するか捨てるかの二者択一。水風呂に入ったり腹を叩いたりしたが流産はせず、11年、自宅で次女を出産すると、わずか1時間後の午後9時、母乳もミルクも与えない状態で夫が妻を促す。
「そろそろ行くよ」
鬼畜か。長女を捨ててから、1年1カ月しか経ってないのだ。
新生児をショルダーバッグに入れ、自転車で外出。選んだ場所は公園のベンチだった。近所のスーパーが開いていて、帰りの客が気づくと思ったのだそうだ。気づいたのは公園内を歩いていたホームレス男性だったという。何かの事情で帰る家を失った人が、生まれた途端にホームレスにさせられた赤ん坊を助けたのだ。おかげで命を取りとめたが、少し遅れたら死亡してもおかしくなかった。
すんでのところで命拾いした長女や次女について、感情のこもった言葉を何ひとつ口に出せない夫を見て、弁護人はかばう気力を失ったらしい。
「えー、つまりあなたとしては、死ぬなんてことは頭になかったわけね?」
違うね。死のうが生きようがどうでもよかったのだ。頭にあるのは保身だけ。長男殺害の容疑で自分が捕まることを避けるために、その後に生まれた3人を見捨てた。今回、長男の件は罪に問われていないけれど、泣き声がうるさくてうつぶせにし、呼吸ができなくなったために死なせてしまったという自覚があるのだろう。
奇跡的に生き残り、施設で育てられている3人の子どもに関しても、ふたりは醒めたセリフで突き放す。