各世論調査でリードする舛添陣営。自民党が主導する選挙戦は、種々の思惑含みとなっている。
まず選挙の組み立ては、自民党お得意の組織型となった。市区町村議の後援会をフル稼働させ、執行部は比例区選出の参院議員に、各種団体から推薦をもらうよう指示。また所属国会議員に、都内に住む100人以上の名簿の提出も命じた。
「舛添さんは自民党参院議員だったが、浮動票を獲得する選挙をしてきた。今回が自民党のスタンダードの選挙。実際はこうして選挙が成り立っていると舛添さんに知らせる効果がある。またこれから自民都議とつき合う上での『共通言語』にもなる」(自民党幹部)
舛添氏は著作などで、業界と政治家の蜜月を“自民党的なるもの”として徹底して批判を加えてきた。それを今回、“リアル自民党”に洗脳しようという魂胆だ。
そして選挙期間中に島部を除く都議選41選挙区すべてを回り、自民党都議が開催する「ハコもの」に顔を出させる方針だ。
女性問題などについては、雅美夫人を伴うことでイメージ回復を狙う。
1月23日に東京・新宿の事務所で行われた出陣式でも、「私の家内を紹介します。ちょっと若くて、16歳年が離れておりますが、朝晩ご飯をつくってくれています。家事も子育てもやってもらっています」などとのろけてみせ、仲むつまじい姿をアピールした。
また細川陣営が争点として単一化しようとしている脱原発については、徹底的に無視。選挙ビラで原発については触れず、相手の土俵に乗らない戦術だ。
「争点はまず東京五輪をどうするか。2月7日からソチ冬季五輪が始まり、五輪ムードが高まって9日の投票日を迎える。五輪五輪と言っていたほうが関心を呼べる」(都連幹部)
こうした選挙を仕切る選挙対策本部長には、引退していた深谷隆司元通産相(78)を引っ張り出した。石破茂幹事長(56)が電話で依頼したのだという。
1994年に細川氏が東京佐川急便から1億円の献金疑惑で辞任したとき、深谷氏は衆院予算委員会の筆頭理事として舌鋒鋭く迫る役回りだった。今回も細川氏の弱点を朗々と繰り返す。
最後に勝利が確約された段階で、安倍首相を投入する。首相が都知事選で応援に入るのは、99年の小渕恵三首相以来となる。
自民党幹部は、「世論調査を見ても無党派層は細川氏との差はさほど開いていない。自民党のおかげで勝ったという恩を舛添氏に押し付ける。これがわれわれにとっての最上パターンだ」と話す。
※週刊朝日 2014年2月7日号