今や日本を代表する演出家の一人である蜷川幸雄さんと、その妻で女優の真山知子さん。周囲の反対があった中で結婚したふたりは、結婚生活の中で互いの価値観の食い違いを感じたことがあったという。
「劇団青俳」の俳優だった蜷川さんと女優の真山さんが結婚したのは1966年のこと。媒酌人は俳優の岡田英次、和田愛子夫妻。蜷川さんが31歳、真山さんが25歳のときだった。新婚旅行は軽井沢と八ケ岳へ。もともと真山さんは、青俳で蜷川さんの7期後輩で、東映のニューフェース出身だった。
そのふたりが結婚に至ったのは、テレビの仕事で名古屋に行ったとき、偶然、新幹線で席が隣り合わせになり、話し始めたのがきっかけだった。
真山:ちょうどベトナム戦争が激しくなっていたときで、どういう状況になっているかを蜷川が上手に解説してくれたんです。それを聞いて、人間として上等というか、人として上質だなって感じたんですよ。それから結婚すると決めたんですが、みんなから『将来性のない俳優とよく結婚するわね』と言われるほどで、周りの人たち、10人が10人とも反対してました。