還暦を過ぎても健康的な女優の由美かおるさん(63・以下、由)。いまだ更年期障害になったことがないというが、がん診療とともに、養生にも造詣が深い名医・帯津良一先生(77・以下、帯)との対談で、その秘訣を明かした。
帯:由美さんは西野バレエ団にいらして、西野流呼吸法を実践されていらっしゃいますね。
由:バレエ団の主宰者で私の恩師の西野浩三先生が西野流呼吸法を30年ほど前に創始され、それ以来、実践しています。
帯:西野先生にはお会いしたことがないんですが、私の周囲には西野流呼吸法を教わっている人が結構いるんです。大学の先生とか、何人もいますよ。がんを克服した私の患者さんで、「私が今あるのは、ひとつは西野流呼吸法のおかげだ」としみじみ語る人もいます。
由:西野流呼吸法のお稽古を行うと、人間の身体を構成している約60兆個の細胞に生命エネルギーが供給され、細胞の一つひとつが活性化するんです。帯津先生の、体を内側からよみがえらせるというホリスティックな考え方も本当に素晴らしいですね。西野先生とつながりますし、西洋医学だけでなく東洋医学も取り上げて、呼吸が大切だとおっしゃっていますよね。
帯:呼吸法によって腹式呼吸をすると、腹腔内の圧力がリズミカルに変化して内臓に対するマッサージ効果があるんです。おなかだけではなく胸腔の臓器にもいい。あと、吸う息で交感神経が優位になって、吐く息で副交感神経が優位になる。いまの世の中は、さまざまなストレスで、どうしても交感神経ばかりが働いて副交感神経が置いてきぼりをくっている。そこで呼吸法をやって吐く息に気持ちを込めると、副交感神経が高まってきてバランスが回復するんです。
由:西野流呼吸法では、足芯呼吸という独自の呼吸が基本になっています。足芯とは足の裏のことです。まず息を吐きます。吐くときは口からです。ずっと足芯に向かって息を吐いていきます。苦しくならない程度に、シューッと吐いていったら、今度吸うときは鼻からです。たとえば自分の体が樹木だと思い描いて、木が根っこから水分、養分を吸い上げていくようなイメージを描くんです。足芯から、根っこから吸い上げる感じで、ひざ、太もも、丹田(下腹部)へ。そこから肛門を意識して背骨を通して頭頂まで吸い上げます。そこで軽く息を止め、体の前面を通して丹田に下げる。ここがちょっと難しいんです。吸い上げっぱなしじゃなくて、吸ったものを意識して下げて、また口から足芯に向かって吐いていく。すると一呼吸でゆったりとなり、体が熱くなり、いろんなところから汗が出てきます。内臓の働きが活発になり、循環がすごくよくなり、とにかく体がよしやるぞと、元気いっぱいになっていくんです。
これをやっておりますと本当に調子がいいです。みなさんが更年期障害だっていっても、えっ、それどういうのって。経験が今はまだない。だから若いときと同じように結構無理なこともやっちゃいます。
※週刊朝日 2014年1月17日号