ニッポンの葬式が変わってきた。本格的な高齢化社会を迎える中、これまでの葬儀業界の常識が徐々に壊れつつある。

 従来の「言いなり」の葬儀ではなく、「自分らしさ」を提供する会社も増えてきた。

 代表的なのが、日比谷花壇だ。同社は生花販売の最大手だが、「ホテルで開かれたお別れ会に出した花祭壇を見たお客さまから、『この花を使ったお花の葬式をしてほしい』と頼まれたことがきっかけで始めました」(広報担当者)。

 例えば、ハワイが好きだった故人には、ハワイの雰囲気を花で演出したり、故人が生前好きだった花で祭壇を飾ったりするという。顧客一人ひとりの要望を聞いて、専属デザイナーがプランを考えてくれるそうだ。

 同社は自前の葬儀スタッフを備えており、都市部を中心にサービスを提供する。東京都品川区の斎場で行われた日比谷花壇のお葬式に参加してみた。

 式場に入った瞬間、なんとも言えない花の良い匂いに包まれた。葬式の暗い気持ちとはほど遠く、ユリの匂いが気持ちを一気に明るくさせる。

 祭壇には、故人が生前好きだったトルコギキョウがふんだんに使われていた。脇役として、結婚式で見かけるブルースターの青色が映え、あじさいもしっとりと輝いていた。祭壇の両脇には、大きなガラスの花瓶にユリがゆったりと生けられている。

「我々の顧客は、お坊さんを呼ばずに、家族だけで送る無宗教の家族葬が全体の半分を占めます。都会に出てきて菩提寺(ぼだいじ)を持たない人が、『自分らしさ』を求めたお葬式を選ぶようです」(ライフサポート事業統括部・安藤路育氏)

 料理も“常識”やぶりだ。

 これまでの葬式といえば、葬儀社と契約している仕出屋の通夜振る舞いや精進落としを食べるしかなかった。出来合いの乾いたすしや、冷めたてんぷらが定番で、選ぶ余地がなかったといえる。こうしたなか、同社は立食形式のビュッフェやコーヒーとケーキのセットなども選択できるようにした。

「手前みそですが、法要のときに、『もう一度同じものが食べたい』とリクエストがあるほどおいしいものばかりです」(同)

週刊朝日 2013年12月13日号