ガチンコ対決に発展した小泉氏と安倍氏の対立に、自民党執行部の面々は右往左往するばかり (c)朝日新聞社 @@写禁
ガチンコ対決に発展した小泉氏と安倍氏の対立に、自民党執行部の面々は右往左往するばかり (c)朝日新聞社 @@写禁
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 最近、永田町でちょっとした話題になっているテレビCMがある。

「キリンフリーが売れているのもコイズミさん人気です」
「ありがとうございます。あー、もちろんアベさんの人気も」
「とってつけたみたいな……。傷つくな」

 小泉今日子と阿部サダヲが、ノンアルコールビールを片手に演じるこのCM。

 第1次安倍政権時に放映されていれば、衰えぬ小泉純一郎元首相(71)の人気を前に、いじける安倍晋三首相(59)と風刺が利いたCMとして評判を呼んだはず。

 第2次安倍政権でこの図式は当てはまらないと思われてきた。高止まりする支持率を背景に、政権運営に絶大なる自信を持つ安倍首相。

 ところが風向きが変わりつつあり、現実がCMに近づきつつあるのだ。

「小泉さんが日本記者クラブで会見をする前日の11月11日、安倍さんを中心に中枢の議員で集まって対応策を練りました。脱原発を訴え続ける小泉さんの真の狙いは一体何なのかを議論したようですが、結局、誰もわからない。『変に飛び込むとけがをする可能性があるから、もう少し様子を見よう』という結論に至ったようです」

 こう解説するのはある自民党幹部だ。世間の注目をにわかに集めつつある小泉元首相に対し、ついに政権中枢の面々が顔をそろえて対策を練り始めたのだ。

 そして安倍首相は自らを鼓舞するようにこう周囲に語ったという。

「他から『政治的な師である小泉さんが、安倍さんに脱原発だとおっしゃってるじゃないですか』と言われたら、『私が小泉さんから教わった最大のことは、政治家は一回発言したら絶対に曲げちゃいけないことだ』とはっきり言うよ」

 あくまでも強気の姿勢を崩さない安倍首相ではあるが、日頃から有権者と接している自民党議員にとっては、冗談ではすまない状況になりつつある。

 日本記者クラブの会見で「原発ゼロにする時期をどう考えるか?」と問われた小泉元首相はキッパリと言い切った。

「私は即ゼロがいいと思います。再稼働すると、また核のごみが増えていく。いま原発ゼロなんですから、ずっと再稼働を中止する」

 事実上再稼働を容認し、核燃料サイクルを温存する党の方針と真っ向から対立する「爆弾」を放ったのだ。

「ここまで勝手なことを言われたら、さすがに看過できない。原発をやめたらエネルギー政策が破綻することは小泉さんもわかっているはず。火力発電をフル稼働させることで、燃料費がかさみ、年4兆円近くが支払いで海外に出ていっている」(推進派議員の一人)

 しかし党内からは反発の声こそ上がるが、世論は「小泉節」を待ち望んでいたかのようだ。ある中堅議員がこう打ち明ける。

「地元では支持者から『小泉さんの言うとおりだ。なぜ、自民党は実行できないんだ』という声が出始めてきた。小泉さんの影響力をひしひしと感じる」

週刊朝日 2013年11月29日号

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