昨年、個人事務所社長とのトラブルを機に「お家騒動」が話題になった歌手・小林幸子(59)が、ジャズシンガーとしてステージに上がる。“新機軸”に挑戦する決意を聞いた。

「私にとって真実はひとつです。それは何も変わっていません。だから卑屈にもなっていないし、堂々と歌を歌っていきます」

 小林は、記者の目をまっすぐに見て、そう話した。昨年4月、小林は長年活動を共にしてきた個人事務所社長らと決別した。その原因として、小林の夫による芸能活動への介入や金銭問題などが取り沙汰されたが、双方の主張は食い違った。小林は世間からバッシングされ、実質上の活動休止状態に追い込まれた。

 今年6月から「デビュー50周年コンサート」で全国を回る傍ら、9月16日には、お笑い芸人の小藪千豊が主催するお笑いと音楽の祭典「コヤブソニック2013」にサプライズゲストとして出演。派手な衣装で登場し、若い観客たちのド肝を抜いた。また、「ニコニコ動画」に自ら配信したコミカルな動画が、公開後3日間で約120万回という驚異的な再生回数を記録するなど、演歌になじみのない若年層の間で「人気者」となっている。

 そして11月には若手実力派ジャズバンド「ソノダバンド」との共演も予定され、そこではジャズシンガーとしてステージに上がる。

 芸人との共演、動画配信、ジャズへの挑戦……小林が演歌以外にフィールドを広げるのは、なぜか。

「ネット世代の若い人たちが動画を見て、私のことを『さっちゃん、ラスボスだー』なんて言ってくれるのは、すごくうれしいんです。もともと、私は新しいことに人一倍興味がある。若いころ、『おもいで酒』がヒットする以前は、全国のクラブやキャバレーを回っていましたが、ジャズ、シャンソン、民謡など演歌以外のさまざまなジャンルの曲にも挑戦していました。長い間、演歌歌手としての活動がメーンでしたが、現在またこうして幅広いお仕事をいただくことになって、改めて、自分の引き出しに多くの芸を詰めてきてよかったなと思っています」

 もう「お家騒動」は吹っ切れたのだろうか。

「今の事務所のスタッフは、私と同じように 『新しいことをやりましょうよ』って一丸となってくれるんです。去年、バッシングされたとき『何も言わないのが一番』と思って沈黙を貫きましたが、言われっぱなしで悔しい思いもしました。ただ、今はその気持ちも乗り越えています。真実ではない噂を塗られてしまったのなら、新しい挑戦を繰り返して上塗りをしていくしかない」

 昨年、豪華衣装を準備しながら落選した紅白歌合戦に関しての思いは?

「私は選んでいただく立場ですので、お話があれば、お応えさせていただくだけです。過去に何をやってきたかではなく、これから何をやっていくのか。それが大事だと思っています」

 今年の大晦日には、豪華衣装でジャズを歌う姿が見られるかも。

週刊朝日  2013年11月1日号