番付を指さす遠藤。大好物はキットカット。バレンタインデーはチョコの山? (c)朝日新聞社 @@写禁
番付を指さす遠藤。大好物はキットカット。バレンタインデーはチョコの山? (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 江戸時代、相撲取りは与力や火消しの頭と並ぶ「江戸の三男」といわれ、「色男」の代名詞だった。

 久々にそんな色男が角界をにぎわせている。秋場所新入幕の遠藤(22)=石川県穴水町出身、追手風部屋、本名・遠藤聖大(しょうた)。身長183センチ、体重146キロという「お相撲さん」らしい体つきに、キリッとした目元が特徴の「イケメン」だ。

「場所中は花道に現れるだけで割れんばかりの大歓声です。横綱をしのぐほどの人気で、若貴兄弟以来の騒ぎになってますね。遠藤目当てなのでしょう、今場所は女性の姿も多くて、黄色い声援が飛んでいました」

 こう話すのは、大相撲ライターの佐藤祥子さん。「ロックバンド『GLAY』のボーカル・TERUか、ジャニーズの赤西仁をたくましくした感じ」と、ほおを染める女性ファンもいるとか。国技館入りする遠藤をひと目見ようと待ち構える人垣は、日ごとに厚くなっていった。相撲好きで知られる女優の紺野美沙子さんも、ラブコールを送る。

「立ち合いに勢いがあって、所作や四股(しこ)がとてもきれい。ファン心がしびれました。土俵では冷静なのに、笑うとかわいいところもグッときます。いまのざんばら髪も新鮮ですが、大銀杏(おおいちょう)を結った精悍(せいかん)な姿を早く見てみたいですね」

 小学1年生で相撲を始め、中学時代にはすでに逸材として注目を集めていた。

 名門・日本大学の4年生だった昨年、国体と全日本選手権を制して「アマ横綱」に。史上2人目の「幕下10枚目格付け出し」の資格を得て、今年の春場所で初土俵を踏むと、昭和期以降最速の所要3場所で幕内に昇進。注目の秋場所も見事に勝ち越してみせた。

 相撲リポーターの横野レイコさんは、精神面の強さにも太鼓判を押す。

「常に大勢の取材陣に囲まれていますが、心が乱れない。横綱を目指すという決意がしっかりしているので、ブレないのでしょう。これまで25年、角界を取材してきましたが、これほどの逸材はなかなかいません」

 気がかりもある。学生相撲出身の力士は過去にも大勢いたが、横綱まで上りつめたのは輪島ただひとり。スポーツジャーナリストの玉木正之氏はこう話す。

「相撲をスポーツとしてとらえると、遠藤は完璧なアスリートといえる。しかし、大相撲は神事です。一種神秘的ともいえる力を持つ者だけが横綱になれる。番付が上がる来場所は、横綱や三役と当たるので負けを重ねるでしょうが、相撲は負けから学ぶもの。正念場はその次の初場所です」

 秋場所は左足首の負傷で、14日目から休場。相撲の神様が与えた試練を、遠藤は力に変えられるだろうか。

週刊朝日  2013年10月11日号