ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏の結婚に、文筆家・北原みのり氏の周辺では若い女性たちが悔しげに声を上げているという。一方で北原氏は、今回の淳の結婚について別の見方をしている。
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私の周りの20代女子がこぞって、ロンブー淳の結婚にショックを受けている。原因は、妻の父が書いたという「取扱説明書」だ。そこには“製造元”である父親が「貴方様に最高のやすらぎと小さな幸せ感を日々与えてくれることを保証致します」というようなことを書いていた。この説明書とやらに、淳さんは涙ぐんだという。
20代女子は、悔しそうに言った。「女は物じゃねぇし、なんで感動するのか意味わかんねぇし!」。そして「日本の男とは結婚はしないー」と宣言までする始末。……凄いね、淳さんの結婚。男が結婚に求めるものを、べろーんって見せちゃったんだね。ちなみに相手の女性は、「浮気されたらどうします?」という質問に、「一緒に反省します」と答えたそうだ。「取扱説明書」に感動できない感性を持つ女たちには、1億年生きても思い付かない発想だ。
ところで淳さんの結婚話で私が印象に残ったのは、プロポーズの日のことだった。淳さんは「台所から朝食の準備をする包丁の音が聞こえて」、気持ちが盛り上がったのだという。トントンという朝の包丁の音って、やっぱりお母さんを想起させる。パンじゃなくて、和食っぼいし。浮名を数多く流した男でも、最終的にはお母さんのように世話をしてくれ、包容力のある女性を選ぶものなんだね。
この国の男はお母さんが好き! そのことを去年、木嶋佳苗の取材を通して思い知った。複数の男性からお金を奪った彼女を、「ブスなのに」と不思議がったり、「セックスがよかったのだろう」と言う人は少なくなかった。が、彼女は、ただお母さんのように振る舞っただけだ。ご飯をつくり、世話をし、話を聞いてあげた。それ故に(セックスではなく料理をしたから!)、男たちは彼女に惹かれ、信じ、騙されたのだ。
この社会では、面倒くさい美人より、お母さんみたいな不美人のほうがもてる。もちろん美人でお母さんだったら最強だ! だから淳さんの結婚は男には理想で、女にしてみれば、わかりやすい女を選んだ男に、少しがっかりするのである。ああ、あなたもフツーのマザコンだったのね、と。
※週刊朝日 2013年10月11日号