「土下座」が今、メディアを賑わせている。TBSの人気ドラマ「半沢直樹」では堺雅人演じる主人公が土下座するシーンで高視聴率を記録。さらに9月末には謝罪師が土下座などを駆使し、国家危機を救う映画も封切られ、「どげせん」なる土下座漫画も大人気だ。
日本人は、いつからこれほど土下座を好むようになったのだろう? 『パオロ・マッツァリーノの日本史漫談』(二見書房)で土下座の歴史を詳述している戯作者パオロ・マッツァリーノ氏に聞いた。
「江戸から明治・大正期までの日本人は、地べたに座ったりしゃがんだりする動作をすべて土下座と言っていました。地べたにあぐらをかいて座るのも、いわゆるうんこ座りもすべて土下座です。だからそもそも、土下座に謝罪のイメージはなかったのです」
江戸時代は、「うんこ座り」も土下座の一種であり、現在で言うところの「土下座」は、本来「平伏」と呼ばれていたのだとか。大名行列が通るとき沿道の町人たちは平伏しなければならないというイメージがあるが、それは間違い。元幕臣が紀伊家の大名行列などを記録した『徳川盛世録』(1889年、市岡正一著)には、町人たちが行列の脇でうんこ座りをする様が描かれている。明治天皇が巡幸する際、沿道で見送る人々は、土下座でなく立礼をする(立ったまま頭を下げる)のが正式な礼法とされた。