北尾トロ(きたお・とろ)1958年福岡県生まれ。フリーライター。雑誌「季刊レポ」の編集発行人。『裁判長!死刑に決めてもいいすか』『長く働いてきた人の言葉』など著書多数(撮影/門間新弥)
北尾トロ(きたお・とろ)
1958年福岡県生まれ。フリーライター。雑誌「季刊レポ」の編集発行人。『裁判長!死刑に決めてもいいすか』『長く働いてきた人の言葉』など著書多数(撮影/門間新弥)
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 今年も高値確実のウナギ、なかでも天然ものは高嶺(たかね)の花だ。ところが、なんと、実は東京の川でも釣れるという。それもペットボトルで。フリーライターの北尾トロ氏が実践した。

*  *  *

 5月下旬の夕暮れ、北区赤羽に僕は居た。釣り場は荒川水系隅田川の支流・新河岸川だ。江戸川などに比べるとサイズは劣るが、数が釣れるスポットだという。初夏の心地よい風が頬(ほお)をなでる岸辺に陣取り、のんびりと釣りざおを垂れる。風情あるなぁ。いや、それはウナギ釣り名人の三橋雅彦さんで、僕のはペットボトルで作った仕掛けだ。

 ペットボトルでウナギ釣りと聞くと、川に沈めたペットボトルの中にウナギを閉じ込める方法を想像するだろう。僕もそうだった。実際は、ペットボトルを釣りざお代わりに使う。引きがあると、岸に置いたペットボトルがコテンと倒れ、ウナギがかかったことがわかる仕組み……、子どもの遊びかよ!

 とても釣れる気がしないが、開始から1時間で、三橋さんが釣りざおで1匹釣った。さらに待つこと30分後、ついにペットボトルが反応した。夢中で釣り糸をたぐりよせると、50センチ級の立派なウナギがかかっているではないか。

「ややや、やった、やりました!」

 俄然(がぜん)おもしろくなった。引きを見逃さぬようペットボトルに鈴をつけ、鳴るのを待つ。エサを取られていないか30分間隔でチェックしたりと、それなりに忙しい。遠目には川を眺めて思いにふけっているようにしか見えないが、神経は研ぎすまされているのだ。

 チリリ……。ほらきた! トータルで5尾を釣り上げた。小ぶりのものはリリースしたが、素人が結果を出せたことからも、東京の川にはそれなりの数のウナギが生息していると断言していいだろう。

週刊朝日 2013年7月19日号