たばこの煙などの影響で引き起こされる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」。「せき、たん、息切れ(息苦しさ)」を3大症状としているが、炎症は全身にも影響を及ぼし、命にかかわることもある。北海道大学病院第一内科科長で日本呼吸器学会理事長の西村正治医師に話を聞いた。
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COPDの自覚症状であるせき、たん、息切れはいずれも風邪や心臓病などでも起こるありふれた症状です。喫煙者はせきやたんが日常的に出ていることも多く、それらの症状がCOPDという病気が原因で起きているものだと認識しにくい。これが診断率の低さにつながっています。
実際のところ、当院でも自らCOPDを疑って受診することより、風邪やインフルエンザなどによる受診をきっかけにして、二次的に見つかることのほうがはるかに多くなっています。かなり病状が進行してからでないと自覚するのはむずかしいといえます。
しかし、ほかの病気と同様、早期発見、早期治療が大事です。治療をしなければ知らず知らずの間に病状が悪化し、最悪の場合、命にかかわるような状態を招きかねません。当然ながら少しでも症状が軽いうちに治療を始めたほうが、QOL(生活の質)を保ちやすくなります。
早期発見・治療が必要な理由はもう一つあります。
COPDは肺炎などの呼吸器感染症や肺がんを合併しやすいだけでなく、全身に炎症をもたらして、脳血管障害(脳卒中など)、心疾患(心筋梗塞、狭心症)、骨粗鬆(こつそしょう)症など、さまざまな病気の発症リスクを高めることがわかっています。そのため、早期からしっかり治療をしていくことが必要となります。
※週刊朝日 2012年12月28日号