唾液の分泌量が低下した状態である「ドライマウス」と、全身の健康との関連が近年指摘され始めている。ドライマウスとかぜについての調査を実施した国立病院機構栃木病院歯科口腔外科医長の岩渕博史医師に聞いた。
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たとえば、ドライマウスになると口腔が汚れるので誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすくなります。口の中が渇くと食べ物をのみ込みにくくなるので、不慮の事故の死亡原因でもっとも多い窒息の危険性も高くなると考えられます。食道がんの危険因子の一つである逆流性食道炎の人にはドライマウスが多いとの報告もありますが、このことはドライマウスが食道がん発症に関与する可能性を示しています。
「唾液は口腔内やのどにウイルスや細菌が付着し感染するのを防ぐ」といわれているので、日本人を対象に調査をしてみました。するとドライマウスの人は、そうでない人よりもかぜやインフルエンザに約2倍かかりやすいというデータが出ました(2012年に岩渕歯科医師が論文発表)。
高齢者ではかぜやインフルエンザの罹患(りかん)から肺炎を生じることがあります。肺炎は高齢者の死亡原因で多い疾患であることからも、ドライマウスを軽視すべきではないといえるでしょう。
※週刊朝日 2012年11月30日号