大地震の際、救護や避難、緊急物資の輸送に欠かせない重要幹線道路。それが使いものにならないばかりか、大惨事も引き起こしかねない。カギは「橋」の耐震性だ。

 東日本大震災から約1年半。依然として、日本各地では地震が頻発、おさまる気配はない。

 首都圏では、最大震度7の首都直下地震も近づいている。

 こうした震災の際、重要な役割を担う「緊急輸送道路」の橋梁の耐震補強が不十分で、大地震で落橋や倒壊の危険性があることが国土交通省のまとめでわかった。

 緊急輸送道路は、その目的から幹線道路や、幹線道路へ連絡する道路が指定されていることが多い。そのため、橋が倒壊し通行できなくなると、都市間が分断される可能性もある。

 東京都港区の国道130号にある南浜橋は、片側2車線ながら長さはわずか4.5メートル
だが、極めて重要な役割がある。台場方面と東京都心をつなぐ橋なのだ。台場と東京都心部を行き来する車の大部分は、この道を経由してレインボーブリッジを渡るのが通例となっている。

この橋がなければ、幹線道路の第一京浜に出るのも容易ではない。芝浦運河の上を通り、物流の大型トラックが頻繁に往来する。台場の住民数は5400人ほどだが、就業人口は2万2千人に上る。住民は言う。

「この橋が通行不能になると、台場は事実上孤立してしまうことにもなりかねません」

 東京都は緊急輸送道路の重要性に鑑み、今年度から緊急輸送道路沿いの古い建物約5千棟について、耐震診断を所有者に義務づけた。震災時に緊急輸送道路が建物倒壊で寸断される事態を避けるためだ。

 耐震性能不足がわかった場合、改修工事の費用を助成する仕組みはあるが、自己負担が数千万円規模に上るケースもあり、戸惑う住民もいる。にもかかわらず、都は自らが管理する緊急輸送道路上の橋の耐震対策を行っていないのは、どういうことか。

AERA 2012年10月1日号