スポーツ競技の最中に、選手がけがや病気で倒れると、即座に駆けつけて状態を的確に見きわめるスポーツドクター。そんな姿にあこがれて、スポーツドクターを目指す人が少なくないそうです。ですが、スポーツドクターの出番となる試合や大会は、いつもあるわけではありません。競技がないとき、スポーツドクターたちは何をしているのでしょうか? それだけで生活をまかなえる収入はあるのでしょうか? これらの素朴な疑問に、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に答えてもらいます。
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スポーツドクターの中でも、トップレベルのスポーツの試合に登場する会場ドクターは、テレビ中継で姿を見る機会も多い「花形職業」といえるでしょう。また、各チームのベンチの中には、日頃は選手たちの健康管理やパフォーマンスの維持・向上に努めながら、試合当日は選手たちのプレーをそばで見守る、チーム所属の帯同ドクターの姿が光ります。
スポーツに関わる仕事をしたいと願う医学生や医師にとって、そんな会場ドクターや帯同ドクターのような「現場で活躍するスポーツドクター」は、あこがれの職業です。しかし、その仕事だけで食べていけるドクターというのは、世の中にいったいどのくらいいるのでしょうか?
実際、それほどのスポーツドクターは日本ではほんの一握りしかいないでしょう。たとえば、サッカーのJ1リーグのチームに所属する、専属スポーツドクターのトップなど、ごく限られた人であれば十分な契約料がもらえる可能性があります。しかし、そのような例はほかのスポーツではあまり聞かれません。
現場に出ているほとんどのスポーツドクターは、普段は病院やクリニックなどに勤務して、日常診療をおこなっています。その仕事はさまざまで、診療科も内科、脳神経外科、婦人科、精神科など、整形外科だけに限りません。一般の患者を診ている人も、スポーツ選手を診ている人もいます。そこで、給料をもらいながら、試合のある時だけ要請に応じて休日をとってスポーツ現場に出ているのです。