■100日の壁を乗り切れるのか

 再開の見えない日々。企業経営者は、まさに真綿で首を締められるような状態が続いている。政府からは中小企業向けの融資の要件緩和、社員の賃金を守る制度(雇用調整助成金)などの対策が出ているが、事業者負担も大きく、上限は年間100日までといった制約もある。

「イベント開催の自粛要請を解除する基準が示されないまま、テレビではライブハウスの環境が問題だという報道が続いています。主催者の自粛が広がるなかで、お金を借りることなんてできません」(関野さん)

■それでもなんとか立ち上がろう

「音楽を生業とするアーティスト、ライブハウスの多くがこの苦しい状況の中で、感染拡大を防ぎながら音楽を共有する方法を模索しています」

 3月12日にクラブソニックいわきに出演予定だったミュージシャンのタテタカコは、フェイスブックにこう投稿し、無観客ライブを開催することを決めた。ライブの模様を録音して販売し、ライブハウスの運営とミュージシャンの活動費にあてるという。

 音楽業界の模索は全国各地で広がっている。署名サイト「change.org」では、「新型コロナウイルス感染拡大に伴うイベント中止・延期に対する政府による補填を求めます」というキャンペーンが立ち上がった。すでに1万2000人以上の署名が集まっている。

 しかし、残された時間は多くない。関野さんのライブハウスには、5月に予定されていたイベントのキャンセルも出はじめた。「頑張るしかない。そして、終息を待つだけです」(関野さん)。

 東日本震災から9回目の3月11日。姿が見えず、感染拡大の実害もないウイルスという存在に今、被災地が泣いている。(文・上垣喜寛)