子宮頸がんで主に実施される広汎子宮全摘出術は、術後に排尿障害が起きることがある。程度によって自己導尿が必要になる場合もある。
「手術を受ける病院で、排尿障害の合併症率やそれを防ぐための工夫を聞いてみるといいでしょう」(川名医師)
子宮頸がんの場合は、放射線治療の数もチェックしてほしい。手術数と放射線治療数の割合から、どちらを積極的に実施しているのか、方針がわかる。
子宮体がんは、肥満や糖尿病など内科疾患を合併している場合が多い。
「肥満は子宮体がんのリスクになり、手術のリスクも高くなる。合併症がある患者さんはその治療も必要になるため、どれだけ対応できるかが病院選びの条件になるでしょう」(三橋医師)
卵巣がんは、早期で見つかりにくく、手術では腫瘍をできるだけ取り除き、術後に薬物治療を実施するのが基本だ。
「初回の手術でどこまで取りきるかは病院によって方針が分かれます。どれだけ取りきれるかは、その後の経過にも関わるので、病院の方針をよく聞いてみてください」(同)
手術で完全に取りきることを目指して拡大手術をする場合と、術後の薬物治療に影響が出ないようにとどめる場合とで、病院の方針が分かれる。
また、卵巣がんの薬物治療は多くの臨床試験がおこなわれている。最新の治療を受けたい人は、臨床試験に参加している病院を選ぶのも一つの方法だ。
妊娠を希望する場合は、妊娠するための機能を残す「妊孕性温存治療」ができるかどうかが病院選びの決め手となる。子宮頸がんは頸部だけを摘出し、残った子宮と膣をつなげる「広汎性子宮頸部摘出術」で子宮を残せることがある。この手術の経験が豊富な川名医師は、出産時の帝王切開まで担当する。
「広汎性子宮頸部摘出術は、がんを治すだけではなく、妊娠、出産を目的とした手術。術後の妊娠率や妊娠・出産までをフォローできるかどうかが重要です」(川名医師)
子宮体がんは、妊娠を強く希望する場合、条件によっては「黄体ホルモン療法」で子宮を残せる。ただし、再発のリスクが高くなるため、できるだけ早期の妊娠を目指す。不妊治療とがんの管理が同時、もしくは密に連携できる病院で治療を受けたい。(文/中寺暁子)
≪取材した医師≫
日本大学板橋病院 産科・婦人科主任教授 川名 敬 医師
千葉大学病院 婦人科診療教授 三橋 暁 医師
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より