大動脈疾患については、胸部の弓部という部分から下行部、そして腹部まで広い範囲の手術があり、症例に応じて、適切な治療が必要となる。胸部大動脈瘤・大動脈解離の手術数や、TEVAR(ステントグラフト内挿術)による治療の数も要注目だ。
「開胸手術とステントグラフトを併用する場合もあり、手術件数の多い病院は広く対応可能だと思います」(同)
大動脈弁置換術はここ数年、生体弁を使うことが主流になっている。耐用年数は機械弁に比べ劣るが、抗血栓薬を飲み続けなくていい。
「50~60歳といった比較的若い患者さんは、20年後くらいに再治療が必要となります。長期にわたる治療を考慮した治療法を提案してくれて、長く付き合ってくれる外科医がいる病院は、いい病院だと言えます」(金村医師)
緊急患者の受け入れ態勢も重要だと田畑医師は話す。
「緊急患者を多く受け入れている病院は、急性心筋梗塞や大動脈解離、大動脈瘤破裂といった難症例に対する熟練度が高いと思います。常に麻酔医も待機していることの証しでもあります。ベッドや手術室も、いつでも受け入れ態勢をとっているでしょう」(田畑医師)
また、術後の管理態勢とリハビリテーションの熟練度が重要だと、両医師ともに指摘する。高齢者が多い現状では、術後できるだけ早く離床し、寝たきりなどを防ぐことが重要となる。病院として、医師以外のスタッフの充実度も必須といえる。
心臓は1カ所が悪くなると、他の部位も悪くなる可能性があるため、偏りなく総合的に治療できる病院を選ぶことが重要といえるだろう。
手術数ランキングのデータは、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載しているので参考にしてほしい。(文/伊波達也)
≪取材した医師≫
イムス葛飾ハートセンター 心臓血管外科部長 金村賦之 医師
大和成和病院 心臓血管外科主任部長 田畑美弥子 医師
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より