週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。病院ランキングだけでなく、治療法ごとの最新動向やセカンドオピニオンをとるべきケース、ランキングの読み方などを専門の医師に取材して掲載している。ここでは、「心臓手術」の解説を紹介する。
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主な心臓病の手術として、以下の三つを紹介する。
心臓の筋肉に血液を送る冠動脈という血管が狭くなる狭心症や、塞がってしまう心筋梗塞におこなう「冠動脈バイパス術」。
血液の逆流を防ぐ役割の弁に異常が起こる心臓弁膜症には「弁形成術」か「弁置換術」がおこなわれる。
また、心臓から全身へ血液を送る大動脈に瘤ができるなどの大動脈瘤・大動脈解離には「人工血管置換術」か「ステントグラフト内挿術(TEVAR)」などがおこなわれている。
これらの手術において、患者の負担が少ない低侵襲な手術法が普及している。単独冠動脈バイパス術では、人工心肺を使わず心臓を動かしたまま手術する「オフポンプ手術」が実施されている。
イムス葛飾ハートセンターの金村賦之医師はこう話す。
「患者さんの高齢化とともに、心臓弁膜症などの手術も同時におこなう複合手術が増えています。手術の際は人工心肺を使い、できるだけ正確で短時間におこなうことが求められています」
また、大和成和病院の田畑美弥子医師はこう話す。
「傷口の小さい低侵襲な心臓手術(MICS)も増えていますが、患者さんの条件を考慮して、無理のない症例に適応することが大切です」
心臓弁膜症の治療では、内科でおこなうカテーテル治療の出現により、外科でも手術法の工夫や、新たな治療器具が開発されている。従来の人工弁は12~15カ所程度の縫合が必要だったが、2017年に保険適用となった「スーチャレス弁」は、縫合がわずか3カ所ですむ。
また、冠動脈の治療では、診療科の連携も進んでいる。
「まず、主要な血管にバイパス手術をして、その後にカテーテル治療をおこなうハイブリッド治療も増えています。そういう手術法や、新たな治療器具などが、これから増えると思います」(田畑医師)
将来、再治療が必要になった場合まで考慮して、外科と内科で複数の治療を連携していくことが増えていきそうだという。