本田:ソーシャルメディアで会話するためには、その元になるネタが必要です。実は、ソーシャルメディアで一番シェアされやすいのは、マスメディアのニュースです。ニュースのシェアに自分のコメントをつけることで会話が始まって、話題化していくというパターンがとても多い。そのニュースも「この記事、私も見た」あるいは「見た気がする」というレベルのものが話題化しやすくて、「何それ、ぜんぜん知らない」というものは、話題化しません。

 ただ一方で、PRの現場の動き方でいうと、たとえば、雑誌編集者や新聞記者に記事を載せてもらうために、「今ツイッターでこんなふうに話題になってます」といったことを伝えるわけです。つまり、エコシステムじゃないですが、マスとソーシャルの間をグルグル回っている感じなんですね。なので、最初はツイッターで火種を作って、それをニュースメディアで記事にしてもらって、そのニュースをソーシャルメディアで広くシェアしてもらって、それを見たテレビが取り上げるといった流れを作ることが、話題化のために必要な仕掛けだと思います。

足立:「インフルエンサー・マーケティング」というのが、インスタグラマーだ、ユーチューバーだ、という話だけになっていて、それは大間違いだと思っているのですが。

本田:そもそもインフルエンサーを使うことが目的ではありません。マーケティングというのは「何を解決したら、売れるようになりますか」なんですね。会社やブランド、製品やサービスに、なにか足りないものがあるから、売れていないわけです。たとえば、「今足りないのは、みんなに共感してもらうことだ。それさえ作れたらもっと売れるはずだ」ということを認識していたら、「共感系」のインフルエンサーであるインスタグラマー、ユーチューバーでいいと思います。この人たちはフォロワーとの共感性が強いので共感の輪が広がる、いいですねと。ところが、「このブランドは今信頼性が失われています」とか「認知は広がっているけど、それって本当なの?」と思われている場合は、共感系ではなく、「事実系」のインフルエンサーを使わなければいけないわけです。事実系というのは世の中的に信頼を得ている専門家のことです。たとえば、このブランドの信頼性に必要なのは栄養士であれば、インスタグラマーではなく、栄養士というインフルエンサーを巻き込むPRの戦略を考えなければいけません。そこで信頼性を作ってから、インスタグラマーなりに行くなら行けばいいわけです。やはりマーケティング上、何が自社の課題になっているかという問いが先にあって、それに対して、何をどう活用するかなんです。

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