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『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』(アスキー新書)発売から10年。日本のPRは変化したのだろうか? 著者であり、日本を代表するPRストラテジストとして活躍する本田哲也さんと、マーケティングのスペシャリストである足立光さん対談を、足立さんの著書『世界的優良企業の実例に学ぶ「あなたの知らない」マーケティング大原則』(朝日新聞出版)から、紹介。話題化できる「PR」とは何なのか? 本田さんに聞いた。
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足立:PRは人々に話題にしてもらうためのものですよね。広告でメッセージを伝えることはできますが、よっぽど特長のある製品・サービスやコミュニケーションでない限り、そこには話題にする要素がありません。話題化しないと売れない時代なのに、かたくなに広告だけをやりましょうというのは、そのチャンスをわざわざ自分から手放しているように感じます。
本田:よく「メーク・カンバセーション」と言われます。会話を作る、という意味です。今やソーシャルメディアでもリアルでも、会話にならないものは、スルーされて認識・認知されません。昔は新車が出るたびにニュースになりました。それが学校で話題になったりもした。つまり、広告であっても会話になったわけです。今でもiPhoneの新製品くらいはニュースになりますが、これだけ商品も情報も多様化して、コモディティ化して、企業からのニュースリリースが垂れ流しのように出てくるという状態では、製品・サービス自体のニュース性は、ほぼゼロに近いわけです。なので、ますます話題化できるようなPRが、必要不可欠になっていると思います。
足立:メディアが多様化しているから、世代を超えて、みんなが同じ話題で会話するということがなくなってきていますよね。たとえば、同じ日の同じ時間、日経新聞電子版とスマートニュースとツイッターではぜんぜん違うニュースが流れている。これは、いわば複数の世界が同時に存在している「パラレルワールド」です。見ている人の数が限定されているオンライン・メディアやソーシャルメディアは、広く知らしめるという効果は強くありません。なので、そこで話題になっていることを広くみんなに知らしめるためには、デジタルやソーシャルだけでなく、マスメディアでのPRがやはり有効なんですね。