作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
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写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)
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 鴻上尚史人生相談。同性愛者であることを認めてくれない母に悩んできた39歳女性。8年ぶりに会った母親のLINE「いくつになっても適齢期だからね!」に落胆した相談者に鴻上尚史が示した「母親が変わる可能性」。

【相談56】母に同性愛者としての自分を認めてもらえず落胆しています(39歳 女性 オードリー)

 鴻上さん、はじめまして。私は都内在住の39歳女性です。私は同性愛者で、現在7年お付き合いをしている同性パートナーと一緒に暮らしています。私が家族に同性愛者だとカミングアウトしたのは10年ほど前です。

 私に万が一の事があった時には、私には同性のパートナーがいて、そのパートナーにも連絡や説明をしてもらいたかったからです。

 父からは「知っていたよ」という返答がありましたが、母は私が同性愛者だという事を受け入れられず、そこから連絡しても返事は来ず、顔も合わせてくれなくなりました。父に母の様子を伺うと「時間がかかると思う」とのことでした。

 それから8年ほど経ち、父が食事の席をセッティングしてくれ、1時間くらいの短い時間でしたがやっと母と会うことができました。私が同性愛者だという事には一切触れずじまいでしたが、母に会えるようになったことは一歩前進!と前向きに考え、何よりも母に会えたことがとても嬉しかったです。

 ただ、あんなに拒絶していた私と会ってくれた母が実際どう思っているのか、こちらから聞くとまた関係を断たれてしまうのではないかという恐怖心から、結局母の本心を聞くことはできませんでした。

 その後はLINEで少しずつですがメッセージのやりとりができるようになり、一度だけ、法事で母に会った時は別れ際に「また帰っておいでね」と言ってもらえ、私自身を認めてもらえたかもしれない、このまま昔のように親子関係を築いていけるかもしれない、と思っていました。

 先日私は誕生日を迎え、母からおめでとうというメッセージが届きました。その中に「女の子が授かってとても嬉しかった。その子がお嫁に行ってくれるともっと嬉しい。いくつになっても適齢期だからね!」とあり、私は混乱と共に落胆しました。母は決して私が同性愛者だという事を受け入れてくれたわけではないんだ、と。母が望むような娘に私はなれなかったんだ、と。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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