「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」
発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第10回の質問は「血がつながっていないのに、顔が似ている人がいるのはどうして?」です。
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【Q】血がつながっていないのに、顔が似ている人がいるのはどうして?
【A】じっさいのところ、血がつながっているのです
みなさんは、サルの顔が見分けられますか? みんな、同じ顔に見えませんか?
小学生のころ動物園に見学に行ったら、飼育員さんが数十頭のサルを一頭ずつ見分けて名前で呼んでいるので、たいへん驚きました。私には、どのサルも同じ顔に見えたからです。飼育員さんはいつもサルたちと一緒に生活をしているので、サルの顔を見分ける力が上達したのでしょう。
ちなみに、乳幼児ならばサルの顔をある程度見分けられます。サルたちの一頭が意地悪している映像を見せ、その後それぞれのサルの顔を見せると、意地悪なサルを長い時間注視することから判明しました。つまり、私たちはいろいろな顔を見分ける能力をもって生まれてくるけれども、見分ける必要のない顔については似た顔と思うようになるのです。
その結果、私たちはふだんよく会う人々の顔を優先的に見分けています。一方、あまり会わない人々を見分ける必要はなく、「似ている」と思いがちです。遠い国の人々がみな同じ顔に見えるという経験はありませんか。ありますよね。また逆に、その遠い国の人が日本人を見ると、みな似ていると思うものなのです。
さて、「似たもの夫婦」という言葉がありますが、親子で顔が似ているのは当然としても、夫婦の顔が似ていることもよくあります。赤の他人と結婚したはずなのに、です。私も、子どもが2人いますが、むかし一家で遊びに出かけると、「一家みんな同じ顔している」と言われたことがありました。私自身は「うちはみんな違う顔をしているのにな」と思っていましたが、他人から見ると似ているのでしょう。