馬場 元/1994年順天堂大学医学部卒業。2000年ケンブリッジ大学留学、07年順天堂大学院医学研究科精神・行動科学准教授、11年順天堂大学順天堂越谷病院副診療部長、18年教授
馬場 元/1994年順天堂大学医学部卒業。2000年ケンブリッジ大学留学、07年順天堂大学院医学研究科精神・行動科学准教授、11年順天堂大学順天堂越谷病院副診療部長、18年教授
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高齢者のうつは、認知症と間違われることもあるという。うつ病でも認知症のように記憶力・判断力・理解力の低下がみられることがあり、一方認知症でも意欲や興味、関心の低下など、うつ病のような症状が存在するからだ(写真はイメージです)
高齢者のうつは、認知症と間違われることもあるという。うつ病でも認知症のように記憶力・判断力・理解力の低下がみられることがあり、一方認知症でも意欲や興味、関心の低下など、うつ病のような症状が存在するからだ(写真はイメージです)

 はじめまして、私は精神科医の馬場元です。老年精神医学の専門医として働いています。もちろん、高齢の方ばかりではなく、感情障害を持つ若い方など、メンタル治療においても数多くの患者さんを診てきました。
 
 前回の「認知症予防と治療」は読んでいただけましたか? 新年の今だからこそ、認知症を解き明かして人生100年時代に備えましょう。今回は「急増する高齢者のうつ」をお届けします。
 
 家族や友人、もちろん大切な自分のためにも、ぜひ、ご覧ください。

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 高齢者のうつ病は、社会の高齢化に伴って増加しています。高齢者人口の10~15%程度は発症しているといわれるほど、身近な病気なのです。

 
■認知症の危険因子にもなる「高齢者のうつ病」

 高齢者のうつ病は「老年期うつ病」とも呼ばれており、他の年代のうつ病とは区別されることがあります。基本的に、治療法は共通していることが多いのですが、発病の原因として高齢者特有の誘因があり、それに伴った治療が必要となります。
 
 老年期のうつ病は、高齢になって初めて発症した場合と、過去にうつ病を患い、高齢者になって再発した場合の二つに分けられます。ストレスをためてしまうため、一般に几帳面な人ほどうつになりやすいといわれています。

 しかし、高齢になって初めて発症した場合は、性格による影響は少ないといわれています。加齢による脳の変化により、脳の血流が悪くなり、血管障害を起こしてしまうことがうつの直接の原因になる可能性があるからです。

■配偶者やきょうだいの死、身体機能の喪失も

 高齢者の場合、脳の変化に加えて高齢者特有の心理・社会的要因も大きいです。親や配偶者、きょうだいや友人との死別などといった「喪失体験」を経験しやすくなるからです。
 
 ほかにも子どもの独立や定年退職などによる「役割の喪失」や持病の悪化、目が見えにくくなる、耳が聞こえにくくなるなどの「身体機能の喪失」もあります。
 
 若いころは気分が落ち込んでも時間の経過とともに回復しやすいです。喪失体験は誰でも経験するものですが、加齢による脳の変化によってこうしたネガティブなライフイベントに対して柔軟に対応しにくくなることで、うつ病を発症しやすくなってしまうのです。
 

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