ミニ新幹線タイプのE955形は前後とも「アローライン」の形状を採用したが、ノーズの長さが13メートルと16メートルと異なり、3メートルの差異がどんな違いを生み出すのか、データを採って比較が行われた。

 また、客室の快適性を確保しつつ可能な限り車体断面積が縮小され、フルアクティブサスペンションの搭載や動揺防止装置の改良、車体傾斜装置の搭載により高速でも乗り心地の良い車両が目指された。

 最大の課題であるブレーキ性能は、時速360キロでも275キロと同等の制動距離(非常ブレーキの停止距離)を確保するため、ブレーキ装置が改良された。さらに、屋根に空気抵抗増加装置が搭載された。これは当時、「ネコ耳」と呼ばれて話題になったので覚えている方もおられるだろう。

 これらの研究開発が一定の成果を収め、現在の東北新幹線の時速320キロが実現しているのだ。しかし、ここで「おや?」と思われる方もいるだろう。目標だった360キロには届かなかった。つまり「もうワンランク上の対策」が必要だったのである。

■悲願達成の期待を背負う「ALFA-X」

 2019年5月、JR東日本の新しい試験車両・E956形「ALFA-X」が落成した。「Fastech360」がそうであったように、悲願は最高速度記録の更新ではない。

 東京~新函館北斗間を4時間以内で結べば航空機に対して勝算が見込める「4時間の壁」はなんとか切れたが、今度は札幌延伸時にどれだけの時間で結べるのか、という課題があり、そう考えると以前からの目標だった最高速度360キロで、なおかつさまざまな騒音レベルの低減も達成しなければならないのである。

「ALFA-X」も、従来の試験車両と同様に両先頭車両の形状が全く異なっている。10号車はE5系に近い形状で、ノーズを16メートルから22メートルに伸ばしたようなもの。1号車はノーズを16メートルのままだが、先端から数メートルを極限まで低く抑えたデザインとされた。

次のページ
2020年代の主役になる車両の条件とは