特に2種類の先頭形状を見ると、当時の空力への考え方がよくわかる。というのも、どちらの車両も見事なまでのくさび型なのである。先端から運転席、そして屋根に向かって平面で真っすぐに伸びていく形状は、空気を切り裂いて上へとスムーズに流す形だった。
そんな「STAR21」が、1993年12月21日になんと時速425キロというとてつもないスピード記録を達成した。この車両を使ってスピードの追求と同時に、インフラ整備面での技術も向上。1998年に引退したが、STAR21の成果はE2系(1995年量産先行車落成)などの営業用車両に生かされた。
■時速350キロ運転を視野にした試験車「WIN350」
1992年6月、JR西日本は山陽新幹線における試験車両を開発した。500系900番代を名乗った「WIN350」である。形式名が示す通り、そのテストデータを500系の開発にフィードバックするという明確な目的を与えられた。
この車両もやはり両端で先頭形状が異なっていた。1号車はのっぺりとした滑らかな曲面によって平滑化したタイプで、運転室もその大きな3次曲面に含まれていた。一方の6号車は運転室部分が張り出したキャノピー形状で、その周囲を取り巻く先頭部の傾斜をさらに緩やかにして長くなっている。
試験走行開始からわずか2カ月後の1992年8月8日には時速350.4キロを達成。その後はさらなる速度向上ではなく、パンタグラフ周りを中心とした騒音の低減に重点が置かれた。
その成果を受けて1996年に500系の第1編成が投入されたわけだが、その500系が一時は世界最速の営業車両として活躍した通り、高速化実現の礎を据えた、あるいは新幹線の可能性を示した車両だったと言ってよいだろう。
そして500系電車がデザインの点でも高い評価を受けたことや、幅広い年齢の人たちから多大なる人気を集めた車両であったことも添えておきたい。そのベースにあったのが「WIN350」なのである。1995年に引退したが、先頭車両は両方とも静態保存されている。