これにより、生きやすくなった芸人はいるだろう。ただ、誰もがそういう生き方をできるわけではない。それこそ「蜘蛛の糸」の話のように、みんながそこにぶらさがり、極楽に行けるものでもないのだ。

■必要とされない一発屋

 そもそも、世間はそんなに一発屋を必要としてはいないし、まして、最初から一発屋を名乗るような人を面白いとは感じなかったりする。一発屋の自覚は両刃の剣でもあり、これを持ちすぎると、小さくまとまったり、愛しさが損なわれるからだ。人気の浮き沈みも、気持ちの浮き沈みも大きく激しいほうが、一発屋としての味につながるのである。

 たとえば、猿岩石の物語が魅力的なのも、特大の一発を当てて消えたあと、有吉弘行がどん底からの復活を遂げ、その一方で、森脇和成が迷走を繰り返しているからだ。このままのお笑いシーンが続くようだと、有吉タイプも森脇タイプも出現しにくいだろう。

 そんななか、今年、一発屋の哀しさを感じさせてくれたのがにゃんこスターである。リズム縄跳びネタでのブレイクから1年半、5月に放送された「有吉の真夜中の保健室4」に、アンゴラ村長がピンで出演。「お股が痒い」という悩みを明かした。

「週5は痒いですね。ガリガリかくので、モンスターエナジー(のボトルのデザイン)みたいな傷があります。病院に行ったら、膣にヨーグルトの仲間がいるよってことがわかったんですよ。ラクトバチルスみたいな名前のが、人の3倍棲んでるよって言われて。それが原因なのかなとは思うんですけど」

 と告白しつつ、自ら考案したという公衆の面前での「股のかき方」を披露。バッグやリュックを使ってカムフラージュしながら、かいてみせ、笑いをとった。

 そういう姿に「キング・オブ・コント」で準優勝して一躍人気者になり、携帯電話のCMで桐谷美玲や斉藤工と共演したりした当時の面影はもはやない。恋人同士でもあるスーパー3助とのいちゃつきも、かつてはむかついたものだが、今ではデート代にも事欠くのではと心配してしまう。この、天国から地獄的な落差こそ、一発屋の妙味なのである。

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