フリーアナウンサーの笠井信輔 (c)朝日新聞社
フリーアナウンサーの笠井信輔 (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る
リンパ球の種類、進行の速さなどによって非ホジキンリンパ腫は以上のように分類できる
リンパ球の種類、進行の速さなどによって非ホジキンリンパ腫は以上のように分類できる

週刊朝日MOOK『新「名医」の最新治療 2012』
週刊朝日MOOK『新「名医」の最新治療 2012』

 9月にフジテレビを退職したフリーアナウンサーの笠井信輔(56)が、悪性リンパ腫のため、近く東京都内の病院に入院することがわかった。

【非ホジキンリンパ腫の悪性度による分類】

 血液のがんには、大きく分けて「悪性リンパ腫」「白血病」「多発性骨髄腫」の3種類がある。国立がん研究センターの「がん情報サービス」によると、笠井アナと同じ「悪性リンパ腫」の発症者数は年間約2万9400人。血液がんの原因については、遺伝子や染色体の異常、一部の疾患にみられるウイルス感染など、原因の一部がわかっているものもあるが、特定されていないものも多いのが現状だ。

 週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2012』から、悪性リンパ腫の治療法について紹介する。

*  *  *

 悪性リンパ腫とは、血液中のリンパ球ががん化する病気で、首やわきの下などのリンパ節や、胃や肺などの臓器に腫れが起こる。血液がんのなかでも、がん化した細胞によって非常に多くの種類があるが、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別される。また、リンパ球のうち、「B細胞」「T細胞」「NK細胞」の、どの細胞がどの段階でがん化するかによっても種類が異なり、さらに、病気の進行の速さによっても「低悪性度」「中悪性度」「高悪性度」に分類される。

 血液がんのなかでもっとも多いのが悪性リンパ腫で、発症数は年間10万人に十数人程度。日本人の悪性リンパ腫の9割は非ホジキンリンパ腫で、なかでも多いのがB細胞リンパ腫である。女性より男性に多く、発症年齢の平均は65歳前後だ。

 ほかのがん(固形がん)が、最初はからだのある一部分に発生し、進行すると転移し全身化していくのに対し、血液がんは診断の時点で、すでに全身化していることが多い。薬物療法や放射線治療が効果があり、薬物療法が治療の基軸となるケースが大半である。

 代表的な薬剤であるリツキシマブは、2001年に承認された分子標的薬で、B細胞だけが持つ「CD20」というたんぱく質に結合し、免疫の働きによってがん細胞を攻撃する。分子標的薬の最大の利点は、がん細胞を選択的に狙うため、正常な細胞への影響が少なく、高い治療効果が得られることだと、国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科・造血幹細胞移植科科長の飛内賢正医師(所属は取材当時)は言う。

「リツキシマブが導入されるまで、低悪性度B細胞リンパ腫の一種である濾胞性(ろほうせい)リンパ腫患者の生存期間の平均は7~10年といわれていましたが、いまは15年前後か、それ以上というデータもあります」

 抗がん剤の「シクロホスファミド」「ドキソルビシン」「ビンクリスチン」とステロイド剤の「プレドニゾロン」を組み合わせたCHOP療法に、リツキシマブを加えたR-CHOP療法が、第一選択の治療になることが多い。(文/出村真理子)

※から抜粋

【取材協力(肩書は取材時)】
国立がん研究センター中央病院
血液腫瘍科・造血幹細胞移植科科長
飛内賢正医師