「これって、まさかすっぽかされたんじゃ…、いやいや、待って待って、何度もご飯だっているし、前日にもLINEで連絡とって嬉しいってたし、それに…」
もうボクは自分をごまかすのに必死だったよ。
でも、ここまできたらレストランをキャンセルすることもできないし、一人でコース料理を食べるのも気が引ける。
どうしようって悩んだ挙げ句、結局、仲の良い男友達を誘ったの。恥ずかしいから、詳しい事情は明かさないままでね。
男友達と豪華な料理を味わいながら「遅れてでも来てくれるはず」なんて願ったりもしたけど、連絡が来る気配もなく、コース料理も終盤になった。
もう諦めかけていた時、ふと携帯を見てみると、LINEが既読になってた。
ボクは男友達にバレないようにトイレにいくふりをして、最後の望みをかけて電話をかけたんだ。
でも、やっぱりマナミちゃんは電話に出なかった。
これまでデートをすっぽかされた経験なんてなかったから、なかなか自分の状況を理解できなかったよ。
でも暗い顔したままだと友達にもバレちゃうし、何事もなかったかのように席に戻ったの。
ただ、そのタイミングで、急に店内からハッピーバースデーのBGMが…。
そう、ボクはデートをすっぽかされたことにすっかり戸惑ってしまって、ケーキを用意していたこと、そして、店員さんに最後のデザートのタイミングでケーキを持ってきてくださいってお願いしていたこと…全てを忘れていたの。
ケーキの上には、かわいいサンタやトナカイがのっていて、中心のネームプレートには、「マナミ」って名前が刻まれてた。
男友達も、スタッフさんたちも「?」ってなっていたのが瞬時に分かったよ。
焦ったボクは、とっさに男友達に「男なのにマナミって、ほんと珍しい名前だよねー。みんなびっくりしてるじゃん。おめでとうマナミ」って言って、ごまかした。
男友達は一瞬戸惑っていたけど、ボクの必死な空気感を察してくれて「そうなんだよ、珍しいんだよね俺の名前」って、ボクの嘘にのっかってくれた。
ほんとに感謝。
結果的に、そのやりとりが面白すぎて、ボクはデートをすっぽかされたショックを忘れることができたんだ。