ソフトバンク・千賀滉大 (c)朝日新聞社
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 今年10月、西武が来シーズンから三軍を新設することが発表された。一軍で監督も務めた田辺徳雄が三軍統括に就任し、投手陣の育成のために広島で9年間三軍投手コーチを務めた青木勇人も招聘している。更に11月にはオリックスも2021年から三軍制を敷くと報道されている。

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 この流れは育成を目的とした三軍を常設し、育成選手を数多く抱えているソフトバンク巨人が今年の日本シリーズを戦ったように結果を出していることが大きく影響していると言えるだろう。育成ドラフトで多くの選手を指名し、三軍で育てるというやり方は本当に有効なのか。この2チームの結果を見ながら検証してみたいと思う。

 ソフトバンクが正式に三軍を発足させたのは2011年から。その前年の2010年から積極的に育成ドラフトに参加するようになり、今年までの10年間で57人の選手を指名している。同じ期間での支配下での指名は52人のため、いかに育成ドラフトで多くの選手を指名しているかということがよく分かるだろう。今年指名した選手は当然まだ結果が出ていないため、昨年までの9年間で指名した50人の中で支配下登録された選手を調べたところ、以下の11人という結果だった。

 千賀滉大、牧原大成、甲斐拓也、飯田優也、釜元豪、石川柊太、張本優大、曽根海成、堀内汰門、大竹耕太郎、周東佑京

 千賀は球界を代表するエースになり、甲斐も完全に正捕手と言える存在となっている。ほかに一軍の戦力となった選手では、牧原、石川、大竹、周東もカウントして良いだろう。そう考えると50人中6人が成功し、確率は12%と言える。この数字は果たして多いのか少ないのか。比較するために同じ期間に支配下で指名した47人のうち、一軍戦力となっている選手をカウントして見ると以下のような顔ぶれとなった。

 柳田悠岐、武田翔太、嘉弥真新也、東浜巨、高田知季、加治屋蓮、森唯斗、上林誠知、高橋純平、高橋礼、椎野新、甲斐野央

 47人中12人、成功確率は25.5%という結果となった。ドラフトも打撃と同様に3割当たれば成功と言われており、まだ結果が出ていない選手も多いことを考えると支配下の指名も十分成功していると言える。これに成功率は1割程度とはいえ、千賀、甲斐、周東の日本代表クラスが育成指名から輩出されており、さらに戦力に厚みを持たせる結果となっている。日本シリーズ三連覇も不思議ではない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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