●シャカの饗応担当の神

 また、「ご馳走(ちそう)」という言葉は、韋駄天がシャカのための食料を走り回って集めていたことから生まれた。誰かのために駆けずり回って用意する食事という意味である。この話から、食に不自由させられることがない神さまとして台所・厨房(お寺では庫裏/くり)などにもまつられている。

 以上のような話から、韋駄天は柔和なイメージがあるが、もともとはヒンズー教の神、軍神・スカンダが元になっている。このため韋駄天の様相は、兜や鎧をつけ宝剣などを持つ姿である。たしかに足が速いだけでは、鬼から仏舎利を取り戻せはしなかっただろう。

●韋駄天がまつられるお寺は

 このような仏のため、韋駄天が本尊としてまつられているお寺はない。大きなお寺には別にまつられるお堂があったり、四天王とともにまつられていたりはするがそれもかなり少ない。名の知れた仏さまとしては珍しい存在なのである。それでも、京都の萬福寺や泉涌寺などには文化財級の韋駄天像が鎮座している。

 東京にも、2月の東京マラソン時には参拝者が急増する「大観音寺(おおかんのんじ)」というお寺が人形町にある。本尊は鎌倉の井戸から引き上げられた観音さまの頭(鉄造菩薩頭)だが、境内に韋駄天のお堂がある。

 また、世田谷観音には、京都・二条城から移築された阿弥陀堂があり、ここには阿弥陀如来の脇に左甚五郎作と伝わる韋駄天像が鎮座している。

 今では東京の韋駄天は、スポーツの神さまとして、また子どもの病気を素早くとり除く神としてすでに多くの人に知られる存在となった。他にも、足腰健康、盗難よけのご利益祈願も多い。

 韋駄天は、スカンダの音を漢字に訳す際、塞建陀天(あるいは私建陀天)、やがて建駄天と略されるようになったのだが、法典を写す際の誤写により「建」が「違」へと変化、のちに道教の影響も受け「違」は「韋」と表されるようになった。まったく原型をとどめない仏さまである。一瞬で目の前を通り過ぎる高速の守護神のご利益も、時代とともに各種拡散中である。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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