お金の話題はナイーブなことであるが、現実的にリーグの現在を作り出した大きな問題である。これまで同様の企業スポーツとしての運営方法では、先が見えない状況と言っても過言ではない。
「移動などの待遇面はオランダやデンマーク、米国・マイナーリーグと変わらない。でもチームやリーグ自体の組織力が違うのかなと感じる」
アイスバックス福藤豊は、04年に8巡目(全体238位)でNHLロサンゼルス・キングスからドラフト指名を受け、07年には日本人としては初となるNHLの試合に出場。その他、マイナーリーグにあたるAHL、ECHLや欧州でプレーするなど、まさにレジェンドである。
「例えば、デンマークは『強豪国でのプレー機会を得るためにステップアップする場所』と捉えている選手も多い。リーグ自体ではなくチームそれぞれで、そういう独自のプランも描いている。もちろん二軍などの下部組織もしっかりしている。言葉は悪いけど、育成した選手を売ることで生き残っているチームもある。それも1つの形」
欧州のサッカークラブで目にする風景が、アイスホッケーにも当たり前に存在する。トップリーグを頂点にした『ピラミッド構造』と言える。
「日本でもアイスバックスはジュニアを充実させたりしていて、可能性を感じる。他にも東北フリーブレイズはレディースを創設したりしているし新アリーナができる。こういった試みが増えればリーグ自体も活性化すると思う。最初は小さなことからでも良いから、なんでもやるべきだと思う」
アイスホッケーのグローバルスタンダードを身をもって知っている福藤。今後アジアリーグ、そして日本のアイスホッケーが飛躍するために必要なことを語ってくれた。
「もちろん『強い』ということは重要な要素。勝つことが作用することもあるし、結果は変化をもたらす。そしてまずはリーグ、日本のホッケー関係者がビジョンを持つこと。正直、ここ何年か進化しているリーグなのか、疑問がある。それはリーグのみでなく、日本アイスホッケー界全体にも言える。誰もが深く考えるべきこと」
これは実際にプレーする選手側の『心の叫び』にほかならない。そして日本アイスホッケー界に対する熱い思いは、自らを含めた選手側にも向けられた。
「選手側ももっと本気になるべき。例えば組織がダメで諦めていないか? もっとできることがあるのではないか? 仮にリーグが飛躍的に変わった時に、現状のままで対応できるのか? 僕を含めてやれることはもっとあると思う」