この結果が発表されたプレスセミナー(10月29日開催)に登壇した岩倉敏夫医師(神戸市立医療センター中央市民病院糖尿病・内分泌内科医長)は、重症低血糖の認知度の低さについて、治療法の違いが関係していると話します。

「神戸市立医療センター中央市民病院では2012年に、重症低血糖を起こした135人の2型糖尿病患者を対象とした調査をしました。SU薬を使用する患者のうち、約9割が低血糖をこれまで経験していない、または低血糖を知らなかったと答えました。やはり飲み薬については、リスクの認知度が低いという現状があります」(岩倉医師)

 インスリン治療を主とする1型糖尿病患者は、自分で注射を打つ必要があるため、それにはどのような効果とリスクがあるのかをしっかり勉強しようとします。一方、インスリン分泌を促すSU薬でも治療可能な2型糖尿病の場合、リスクについての知識が不足している可能性があると指摘しました。

 また2型糖尿病患者の場合、周囲から「食べ過ぎたから糖尿病になったんだろう」という認識をされてしまうことがあると岩倉医師は話します。そうなると患者本人だけでなく、家族など周囲の人までもが、低血糖についての知識を得る機会を失ってしまいます。

 患者から家族への働きかけがないという状況も存在します。今回の調査では、「あなたが重症低血糖について、ご家族に相談していることや情報共有していることをお知らせください」という質問に対して、「とくに相談・情報共有はしていない」と回答した人は74%でした。その回答者に理由を聞いたところ、「自分で対処できるため、家族を巻き込む必要がない(12%)」「家族を不安にさせたくない(15%)」といった、家族への配慮を理由とする回答がありました。

次のページ
患者に身近なキーパーソンのサポートが必要