11月14日は、国際糖尿病連合とWHO(世界保健機関)が制定した世界糖尿病デー。日本には約1000万人の糖尿病患者がいると推計されています(厚生労働省、平成28年「国民健康・栄養調査」)。
現在、糖尿病患者が血糖値を下げるには、血糖を処理するホルモン・インスリンの注射や、インスリンの分泌を促す薬・SU薬を使うなどの方法があります。しかし、こうした血糖コントロールに失敗して血糖値が必要以上に下がってしまった場合、意識障害を起こしたり、脳に重大な障害を残したりする可能性があることをご存じでしょうか。
この症状「重症低血糖」に関して、製薬会社の日本イーライリリーがおこなった調査で明らかになったのは、糖尿病患者の75%が重症低血糖について知らないという実態でした。
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重症低血糖の症状としては、意識がもうろうとしたり、体がけいれんを起こしたり、麻痺したり、昏睡状態に陥ったりといったことが挙げられます。数値的には、血糖値が50mg/dL以下になると重症低血糖と呼ばれます。日本糖尿病学会は、国内で重症低血糖患者の救急搬送が年間約2万件発生していると推計しています(「糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告」)。
通常、こうしたことになる前に、眠気、動悸、汗をかくなどの警告症状(交感神経症状)が起きるものです。しかし一部の人は、この血糖値低下を示すサインを感じることなく、突然、重症低血糖を発症してしまうことがあります。これを無自覚性低血糖といい、昏睡してしまった場合には「目が覚めたら病院のベッドにいた」という事態さえ起こります。日本イーライリリーの調査では、重症低血糖の経験がある人のうち6割が、この無自覚性低血糖に自分が当てはまると回答しました。
重症低血糖の患者は、意識障害に陥ったあと第三者によって発見され、搬送先の病院で点滴を受けるという経過をたどることが一般的です。しかし人のいる場所ならまだしも、もし周りに人がいない状況で突然、無自覚性低血糖に陥ると危険です。適切な対応が遅れると意識障害などの後遺症や、命にかかわる危険性も生じます。にもかかわらず、同調査では糖尿病患者の75%が重症低血糖について知らないと回答しました。
いったいなぜこのような状況にあるのでしょうか。