そんな俺と女房、両方のいいところを持っている、交渉のスペシャリストなのが……会社の代表である娘のはずなんだけど(笑)。俺に似て、いい恰好しいでお人よしだから。女房にも、「まだまだ甘いわ」なんて言われている。だから、「ここだけは明確にしてきなさい」という女房の商売人の手法を、俺が咀嚼して伝えるときもあるよ。水掛け論になると収集がつかなくなるから、相手の要望はよく聞いて吟味してから返答するようにとか、落としどころを見極めろなんていうことをね。
まあ、うちの場合は俺と女房と娘、それぞれに必要な役割があって、それを互いに補完しながらやってこれた。身内云々じゃないけれど、誰かが一生懸命交渉して自分や会社の価値を高めてくれているという話が聞こえたら、そこに携わった人たち全員が頑張ろうという気持ちになるし、弾みを付けて成長していける。交渉って泥をかぶることが多いけれど、これも経験のうち。生きるうえでの爆発力に変えればいい。娘に交渉されたエピソード? 「プロレスラーになりたい」だね。2秒で諦めさせたけど(笑)。
(構成/小山暁)