毎日お弁当を作る母の大変さなんて、あの頃はみじんも考えたことなかったな。

 私もチャレンジすることになるかもしれない。

 そして、あの頃の母の大変さを追体験するのかも。

 最近のちびは、食べ物の選り好みが激しい。

 こちらが口に運ぶものを、確認してから口を開ける。

 ごはんはごはんだけ、お魚はお魚だけ、一回に一種類だけしか口に入れない。

 納豆にネギを混ぜると、ネギだけ摘んで避けはじめる。

 そんなちびに、先日、ゴボウのポタージュを作った。

 便秘気味なので食物繊維を摂らせたかったのだ。

 料理をしていると興味深そうに足に絡みついてくるので、キッチンに踏み台を置き、最近は一緒に料理をすることも多い。

 キノコを裂いたり、とうもろこしの皮を剥いたり、卵をパカっと割ったり。

 任せると一生懸命やっている。

 もちろん、めちゃ散らかるけれど。

 で、ゴボウポタージュの鍋を興味津々に覗き込むので、

「ちょっと味見する?」

 ときいてみるとコクリとうなずく。

 ちっちゃなお皿に少しとりわけ、ふうふうと冷ましてから、ちびに渡してやる。

「あちくない?」
「もうあちくないよ」

 嬉しそうにスープを口に含むちび。

「はっ!」

 と目をまんまるに見開き、大きく息を吸い込んでから、放った一言に返す言葉を失った。

「おいちくないね!」

 もちろん、その後一切、スープを口にしてはくれなかった。

 こんな時、三村さん(さまーずの)だったら何て突っ込むのだろうか……。なんてぼんやり考えたよ……。

 子どもは一日中ボケを繰り出してくる。

「ごちそうさまでちた」と言った直後に食べたり、急に踊りだしたり、意味不明な言葉を話し始めたり。

 芸人さんの家庭では鋭い突っ込みが飛び交うのだろうか。

 ある意味、英才教育

 それにしても、この好き嫌いは今だけなのだろうか、それともずっと続くのであろうか。

 お弁当大丈夫だろうか。

 私のお弁当を食べるちびの方こそ試練だったりして……。

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