森保ジャパン発足後にメンバー入りした安西も同じ素養を持つ選手。言うべきことはズバリ言うタイプで、しかも性格が非常にオープンだ。嫌味のないキャラクターに和まされる仲間やメディア関係者も多い。東京V出身ということで、同じ釜の飯を食った中島翔哉(ポルト)や畠中槙之輔(横浜FM)らとの関係性も非常にいい。つなぎ役としての存在価値は着実に高まっているように見受けられる。

 さらに下の世代の菅原も、日本人離れしたキャラクターと発信力を備えている。顕著な例が、今季開幕のフォルトゥナ・シッタート戦で新天地初得点を挙げた後、AZ公式ツイッターにアップした『寿司職人風の動画』。ユニフォーム姿でハチマキのようにタオルを巻いた彼が手を振り回し、最後に顔でポーズを決める姿は、シャイな日本の若者のイメージを一変させた。

「まあ、こういう性格なんで、海外でもやっていける自信はありました。逆に海外に行って何が困るんだろうと思ってたくらい。オランダに来てから電車に乗ってどっかに行って、いい街並みを見たり、人も優しいのでサッカーに集中できる環境が揃ってます」と彼はホームシックなどとは一切、無縁だという。オランダ語が話せなくても、分かる範囲の英語でどんどん周りと話そうという前向きな姿勢も持ち合わせている。そんなオープンマインドが、彼らサイドバックの成功者に共通するポイントと見ていいのではないか。

 これだけ海外で活躍していても、アタッカーやFWに比べるとあまり注目されないのがサイドバックだ。世間の関心を集めるのは、マジョルカで苦労している久保建英の方で、試合出場数が多く、貢献度の高い彼らに陽が当たるケースはやはり少ない。

 ただ、周囲の雑音が少ない分、より冷静にチーム全体を俯瞰して見る機会は多くなる。「今、何が機能しているのか」「どこが問題なのか」「何を改善すればよくなるのか」「どうすればチームが勝利に近づくのか」といった細かい部分を自分なりに徹底分析し、それを実行する力が自然と養われるメリットがこのポジションにはあるのだろう。結果として、サイドバックには類まれな戦術眼や表現力が身につく。「喋れる日本人サイドバック」が多いのは、決して偶然ではないのかもしれない。

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地味でも貢献度が高いのでもっと評価すべき