車窓は、海や湖を離れ田園地帯をひた走っていく。この時期はちょうど稲刈りも終わり、冬に向けてさっぱりとした雰囲気だったが、田植えシーズンから夏にかけての青々とした色合いや、そこから黄金色に染まっていくさまを思わず想像した。季節ごとに異なる色合いで包まれることから、何度乗りに来ても、初めての車窓を感じることができるだろう。

 終点の小浜駅では、消防音楽隊による吹奏楽演奏の歓迎を受け、1時間とちょっとの小浜線旅は締めくくられた。

 このような沿線での各種おもてなし、実は沿線の自治体がそれぞれ独自に考えたものだ。福井県嶺南(れいなん)振興局嶺南プロジェクト推進室の蜂谷美幸さんは、今回の観光列車運行を振り返り「各自治体でのおもてなしの盛り上がりを感じた」と話してくれた。

■敦賀を起点とした地域活性化には、観光列車が重要なツール

 なお、他社の列車を乗り入れさせることは、簡単なことではない。JR西日本金沢支社企画課担当課長の鹿野剛史さんによれば、運行上の問題がないか、設計図などを参考にしながら入念に確認したそうだ。また、鹿野さんは今後の展望を次のように語った。「北陸新幹線敦賀開業により、『敦賀』という地名が全国により知られることになる。こうした観光列車が地域活性化のツールとなればと願っている」。

次のページ
購入者の8割を占める県外者