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令和元年となる今年、天皇陛下の「即位の礼」が10月22日から31日にわたり、世界へ向けて執り行われる。世界中からVIPたちがお祝いのために日本を訪れるおめでたい神無月(かんなづき)の今月、天皇陛下と祭祀(さいし)について少しまとめてみたいと思う。
●元旦に行われる四方拝
天皇陛下は日本国の象徴であるとともに、全国に広がる神社の最高位である神官でもある。まず、元旦には新年の太陽が昇る前に、当年の国の安寧と国民の幸福、農作物の豊作などを祈念する四方拝(しほうはい)という祭祀を行う。四方拝とは、宮中三殿(きゅうちゅうさんでん)の中にある神嘉殿(しんかでん)の前庭で天と地、東西南北の神々を拝する儀式で、古くは平安初期の宇多天皇がおこなった記録も残っている。最初に伊勢神宮の神さまを拝したのち、神武天皇ほか先帝の陵、武蔵国一宮、山城国一宮、石清水八幡宮、熱田神宮、常陸国一宮、下総国一宮を巡拝する。
●三種の神器が持つ意味
四方拝ののち、宮中三殿への祭祀に移る。
天皇陛下が即位された5月1日、NHKなどでも中継された「剣璽(けんじ)等承継の儀」が行われた。簡単に言えば、天皇の証である「三種の神器」を受け継ぐ儀式である。
「三種の神器」とは八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を指し、形容するならば鏡・勾玉(まがたま)・剣の三種のことである。実のところ、三種の神器のうちの2つの実物は宮中にはない。八咫鏡は伊勢神宮・内宮の御神体として祭られていて、形代が宮中三殿の賢所(かしこどころ)に安置されている。アマテラスの岩戸隠れの際、神を外に引き出すために作られた鏡と神話は語る。
●神話からつながる現代
天叢雲剣は、草薙剣(くさなぎのつるぎ)の正式名で、スサノオがヤマタノオロチを退治した際に手に入れた剣である。その後ヤマトタケルの伝説とも結ばれ、実物は熱田神宮の御神体として祭られ、「剣璽の間」に形代が奉安されている。