話をお聞きすると、私のところにおいでになる前に、何軒か精神科に行かされたのだそうです。しかし、どこに行っても「あなたにおかしいところはないですよ。ご主人の言っていることの方がおかしいですよ」とか「ご主人の言っていることは聞き流しておけばいいんです」、果ては「離婚したほうがいい」などと言われたそうです。さすがに夫には「あなたの言っていることの方がおかしいと言われた」とは言えなかったので、「おかしいところはないと言われた」と報告したら、精神科に幻滅したのか、行くべき場所がカウンセリングに変わったのだそうです。
ちなみに、夫が言う「正しいこと」というのは、洗濯物のたたみ方や、料理の仕方などの家事の細かい方法から始まり、家計簿をきちんとつけて予実管理し、結果を毎週報告することとか(以前は毎月だったのが満足できず毎週チェックになったそうです)、自分の親との付き合い方、優菜さんの趣味のコミックスを買いすぎないこと、「間違い」を指摘されたときに嫌な顔をしないことなど。一見もっともな内容が多いのですが、いかんせん多岐にわたります。そして「正しいこと」ができなかったときのお説教はだんだん長くなり、今では30分や1時間はざらで、それもかなり厳しく叱責されるのだそうです。そういうことが週に何日もあるそうです。
「日々、苦しいですよね」と私がお聞きすると、
「夫が言うことは正しいことなので」とお答えになります。
「正しいかどうかは別にして、苦しいですよね」とお聞きしたら
「私がちゃんとできないのが悪いので」とおっしゃいます。
「しつこいですが、悪いかどうかは別にして、苦しいですよね」と繰り返すと、
「先生は、私が苦しいと決めつけたいんですか!?」と怒られてしまいました。
苦しいということを認めると、夫との関係が崩壊してしまう不安をお持ちなのかなと思いました。子どもは欲しい、でも37歳という年齢を考えるともう後がない(夫と別れたら子どもは諦めなければならない)というのも優菜さんの内心の弱みの一つです。