夫婦の関係はさまざま。しかし、支配的な上下関係など解決できない問題があるなら、考えてみた方がいいことがあるという。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「受動的行動」について解説する。
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このところ、幼い子どもへの虐待の事件や裁判のニュースが立て続けに報じられています。夫婦間のDVももちろん嫌な話ですが、子どもへの虐待というのはそれに輪をかけて本当に胸が痛くなる話です。
当時5歳の女の子を虐待死させた事件の裁判の中で、母親の弁護側は「夫の心理的支配下にあった(から、自由意志というわけでないので罪を軽くしてほしい)」と主張したのに対し、裁判所は、夫の目を盗んで食事を与えたりしていたことなどから「最終的には自らの意思で夫の指示を受け入れており、心理的に強固に支配されていたとは言えない」と判断したというニュースがありました。
これには、ちょっと考えてしまいました。
確かに、裁判所のような見方もできます。母親は5歳児ではないので、子どもを守るためにシェルターなどに逃げ込むという手も、理屈としては考えられます。
しかし一方で、母親が、夫に隠れて子どもに食事を与えるなど、子どもを守る行動を一切しなかった方が、「完全に支配されていた」と判断されて罪が軽くなったのではないか、という少々受け入れがたい論理も浮かんできます。
裁判は、難しい状況でなんらかの判断をしなければならないものですが、本当に「完全に支配されていた」のか、頑張れば違う道を選べたのに「支配されることに甘んじた」のかを客観的に判断する方法はありません。それどころか本人にすら、それがわからないことが少なくないのです。
看護師として働く優菜さん(仮名、37歳)は夫から、「(正しいことを教えても実行できない)お前はおかしい。こんなことでは子どもを作ることはできない。カウンセリングに行って自分を見直してこい」と言われておいでになりました。