宇野昌磨がジャパンオープンで披露した今季のフリー『Dancing on my own』は、美しいメロディに宇野の滑らかなスケーティングが乗っていく、爽やかなプログラムだ。昨季まで宇野が競技会で滑るプログラムは樋口美穂子コーチが振り付けており、宇野の氷に吸い付くような滑りがクラシックやオペラの重厚なメロディに調和して映えていた。
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一方、デヴィッド・ウィルソンの振付による『Dancing on my own』での宇野の軽やかなスケーティングには、新鮮な魅力がある。このフリーについて宇野は「つなぎで滑っていく感じが出したい」と言う。「プログラムを途切れさせたくないから、あまりジャンプを失敗せずに、ずーっとスピード感のあるままで」滑りたい、と考えているのだ。
今、宇野は「昨季は辛い試合が多かった」と振り返る。
「終わった後に『すごく嬉しかった』という機会も少なかったし、楽しかった試合もなかった。せっかくこういう(大きな試合で滑る)いい機会を手に入れたのに、あと何年も何年も“辛い”とか“苦しい”という思いだけで終わらせていいものなのかな、ということを考えた」
「試合中、『跳びたい』とか『いい演技したい』というのに必死で、余裕がないんですね。そこだけではなくて、もう少し気持ちの余裕を持ちたい。曲に合わせて滑っている、踊っている時って、すごく心地よい時がある。そういうことを大きな大会という貴重な場で少しでもやることができたら、スケートが楽しめるんじゃないか」
幼い頃から師事してきた山田満知子コーチ・樋口コーチの下を離れ、今季はメインコーチをおかない方針を明らかにしている宇野は、さまざまなコーチの下でスケートを学ぶシーズンオフを送ってきた。
「いろんな環境で練習して、初めて海外の方に振り付けてもらって……。コーチと話していく中で、僕は『ジャンプよりも表現を頑張りたい』と思いました。今まではジャンプを優先するプログラムを、僕が求めてしまっていた。ジャンプももちろん表現の一つだと思っていますけど、ジャンプメインにならない僕の演技をできるようになりたい、とシーズンオフ中に思った。もちろん、ジャンプは今までと変わらず、欠かさず練習してきたつもりなんですけど、今は本当にマジで跳べない。今回はすごく難易度を落とさせて頂きます」