掌蹠膿疱症は原因がいくつか知られています。
まずは最初に紹介した、歯周病をはじめとする感染症です。蓄膿症や扁桃腺が腫れやすい人など、細菌感染がずっと続いていることが、掌蹠膿疱症の原因になると言われてます。
次に金属アレルギー。銀歯の成分である金属にアレルギーがある場合、銀歯を外すと掌蹠膿疱症が良くなる患者さんを経験します。ただ、銀歯の金属アレルギーに関しては、むし歯の治療も同時に行うことが多いため、結局は感染症が原因ではないかと考える専門家もいます。
ほかにはたばこ。たばこは肺がんや食道がんのリスクをあげることが知られていますが、掌蹠膿疱症でもたばこが悪化因子と考えられています。
なぜたばこで悪化するのか? 掌蹠膿疱症の患者さんは、ニコチン受容体が汗腺に発現しているため喫煙で反応するのではないかとの研究報告もあります。(Br J Dermatol 2002; 146:383–91.)
さて、この掌蹠膿疱症は2005年にマスコミで注目を集めた皮膚病です。ある芸能人が掌蹠膿疱症にかかっていることを告白し、本を出版しました。その本の中には、これまで知られていなかった治療法が書いており、著者がその治療法で完治したとのことで一気に有名になりました。
その治療がビオチン療法です。
ビオチンは哺乳類では生合成できない必須ビタミンのひとつです。ただ、さまざまな食事にビオチンが含まれているため、人間の体でつくることができないとしても不足になることはないと言われています。
「掌蹠膿疱症にはビオチンが効く」
このフレーズがマスコミを通して日本中に広まったため、全国の掌蹠膿疱症の患者さんがビオチンを求め皮膚科を受診する状況となりました。
しかし、よくよく調べてみると掌蹠膿疱症に対するビオチン療法は十分なエビデンスがないことに気がつきます。
話題となった2005年の段階でビオチン療法を知っていた皮膚科医はほとんどいませんでしたし、2019年の今でも「掌蹠膿疱症にビオチンが効く」という報告が少ないのです。