大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
この記事の写真をすべて見る
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎、ぜんそくなどのアレルギー疾患が続発することを「アレルギーマーチ」と呼びます。この最初のきっかけは、皮膚にあるということをご存じでしょうか? 好評発売中の『心にしみる皮膚の話』著者で、京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が解説します。

*  *  *

 キンモクセイの香りが街に漂う10月は自分の誕生日もあり軽やかな気持ちになります。自然の中で感じるキンモクセイの香りは優しいものですが、芳香剤で使うキンモクセイの香りはとてもきつくないでしょうか。先日、そのことをSNSでつぶやいたところ、芳香剤とキンモクセイが結びつかない平成生まれの方たちから反応をいただきました。

 昭和生まれの私は共通する話題と思っていたのですが、若い世代とは経験している内容が異なるものですね。

 さて、キンモクセイの香るこの時期は花粉も多く飛びます。秋の花粉症と呼ばれる症状を引き起こす植物があります。ブタクサ、ヨモギ、カモガヤなどです。私は小児ぜんそくをわずらった経験があり、そのほかにもアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎があるのですが、秋の花粉にはとくに反応します。それにもかかわらず、子どもの頃は線路沿いの道端に生えているカモガヤを引っこ抜いて遊んでいました。

 私はぜんそく、鼻炎、結膜炎とさまざまなアレルギー疾患を合併していますが、こういったアレルギーの続発を「アレルギーマーチ」と呼びます。

 次から次へとアレルギーが起きてしまうアレルギーマーチは厄介なものです。このアレルギーマーチの最初のきっかけはなにかご存じでしょうか?

 話は2006年にさかのぼります。イギリスのグループが、フィラグリンという遺伝子の異常とアトピー性皮膚炎の関連を見つけて報告しました(Nat Genet 38, 441-446 ,2006)。

 フィラグリンとは、皮膚のバリアを担当するたんぱくです。垢(あか)となって落ちる部分の構成要素の一つで、フィラグリンが分解されると天然保湿因子になります。化粧品の分野ではセラミドが有名ですが、フィラグリンも皮膚の潤いにはとても重要なたんぱくです。

次のページ
アトピーと遺伝子の関係