このフィラグリン遺伝子に異常があるとアトピーになりやすいとの報告を受け、世界中でフィラグリンの研究がはじまりました。
フィラグリンがおかしいと皮膚はどうなるか? 皮膚のバリアが弱くなります。
ではバリアが弱くなると何が困るか?
皮膚のバリアが弱まれば、外からの異物の侵入が容易となります。
例えばダニやホコリの成分が皮膚から入ってきてしまいアレルギーを引き起こす、このことを経皮感作(けいひかんさ)と言います。
2010年に起きた「茶のしずく石鹸(せっけん)事件」。茶のしずく石鹸(愛称)を使用した人が、小麦アレルギーを発症し、製造販売業者が自主回収することになった事件です。
茶のしずく石鹸に含まれていた加水分解小麦「グルパール19S」が、皮膚から侵入してアレルゲンとして体に認識されました。これも経皮感作です。茶のしずく石鹸の小麦成分をアレルゲンと認識してしまった体は、次に食べ物の小麦にも反応してしまいました。つまり、小麦アレルギーを発症したのです。
皮膚のバリアを突破して侵入してきた敵(小麦)を退治しようと体が覚えたメカニズムが、口から入ってきた敵(小麦)を同じように認識して排除しようと動きだしました。
結果として、小麦を食べると皮膚炎が起きたり下痢をしたり、ひどい場合は咳(せき)や呼吸困難となりました。
アレルギーマーチのきっかけは、皮膚からの敵の侵入です。そして、アレルギーマーチを起こしやすい皮膚が乾燥肌。ドライスキンというものです。
冒頭に説明したフィラグリン遺伝子に異常があれば、ドライスキンとなりますしアトピーにもなりやすい。フィラグリン遺伝子異常がある患者さんでは、食物アレルギーのリスクが高まります(J Allergy Clin Immunol. 2014,134(4):876-882)。ピーナツアレルギーも起きやすい。フィラグリン遺伝子に異常があるとぜんそくも併発しやすいことが知られています(J Allergy Clin Immunol 121, 872-877,2008)。