ホンダのパワーユニットで走るレッドブル (c)朝日新聞社
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 3週間のサマーブレイクが明け、F1サーカスはサーキットに戻ってきた。驚いたのはレッドブル・ホンダとトロロッソ・ホンダのドライバースワップ。ピエール・ガスリーはオーバーテイク能力の低さを理由にトロロッソに移籍、アレクサンダー・アルボンはプレシーズンテストから快走を重ね、リザルトには結びついていないながらもF1デビューから僅か半年という異例の早さでトップチームへの移籍となった。

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 ホンダはドイツGPでトロロッソに11年ぶりの表彰台をもたらしたダニール・クビアトに新パワーユニット(PU)のスペック4を与えた。前半戦で2勝を挙げたスペック3から進化したスペック4の実力は如何に。レース前には「アルボンにもスペック4」を搭載する話もあったが、レース後にレッドブル代表のクリスチャン・ホーナーこれを否定。推測ではあるが、スペック2を搭載したのではないだろうか。

 そして、既報の通り2019年8月31日(日本時間2019年9月1日)のF2・レース1決勝の2周目に重大事故が起きた。

 亡くなったアントワヌ・ユベールは22歳のフランス人レーサー。新進気鋭のドライバーでルノー育成ドライバーでもあり、将来はF1のシートを獲得する逸材と考えられていた。若い才能がこういう形で失われるのは非常に悲しく、やりきれない気持ちになる。

 決勝は5番手スタートのマックス・フェルスタッペンが1周目のターン1でアルファロメオのキミ・ライコネンといきなり接触。フェルスタッペンは奇しくもF2で重大事故が起きたラディオンで再びライコネンと接触しクラッシュ。そのままリタイアとなった。オランダ国籍ながらもベルギーで長い時間を過ごしてきたフェルスタッペンにとっても痛手となった。この時点でスペック2を駆るのはアルボン、スペック3を駆るのはガスリー、スペック4を駆るのはクビアト。

 13周目のピットウインドウオープン直後にまずガスリーがソフトタイヤからミディアムタイヤに交換、そのまま最後まで走る戦略となった。レース中盤ではハースやレーシングポイント、アルファロメオなどと激しいバトルを展開し、課題とされていたオーバーテイクも何度も見せた。発言通り「半年間の経験をリセット」して臨んだ今戦は、去年トロロッソで鋭い走りを見せたガスリーに戻りつつあった。

 同年代の幼馴染であり、6年間を同じ部屋で過ごしたルームメイトであったユベールの事故死と、後半は苦しいタイヤで走らねばならない非常にタフなレース。その環境の中でもパフォーマンスを充分に発揮した。悔しさと悲しさと戦い、必死になってもぎ取った9位だったのではないだろうか。

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ポテンシャルを示したアルボン