感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。
感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。
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ワインを飲んでいると高血圧関連死亡率を下げるであろうというデータがある(Renaud SC et al. Am J Clin Nutr. 2004 Sep;80(3):621–5)。
この研究で面白かったのは、ビールなど他のアルコール飲料では死亡率の減少が見られなかったことだ。「アルコール」ではなく「ワイン」が高血圧関連死亡を下げるのに有用かも、というデータだ。ワインとその他のアルコールは違うのだろうか。
■週7杯以上のワインが食道がんのリスクを下げる?
たとえば、食道がん。お酒の飲み過ぎ(あと喫煙)は食道がんのリスクを高めることはよく知られている。バレット食道は食道の細胞が変化したものだ。これががんのリスクを高めると言われている。
ところが、奇妙なことにワインを週7杯以上飲んでいると、このバレット食道のリスクが下がるかも、というデータがある(Kubo A et al. Gastroenterology. 2009 Mar;136(3):806–15)。
常識的な直感とは真逆の結果なので「ほんとかな」と思う。将来、追試、確認が必要だ。
ワインは他のお酒と異なり、健康面での利益がありそうな理由。その理由はいろいろあり、例えば前述のポリフェノールがそうなのかもしれない。
ぼくが最近考えているのは、喫煙の関与だ。お酒を飲む人は喫煙する可能性が高いことは昔からよく知られている。だから、アルコールと喫煙の健康リスクは分断して考えるのがわりと難しい。