ハンブルガーSVでキャプテンマークを巻いてドイツ・ブンデスリーガ1部残留争いを2度、昇格争いを1度経験した男の発言には説得力がある。やはり欧州復帰組ですぐにJリーグで存在感を発揮できるのは、海外クラブでどれだけコンスタントにプレーし、結果を出していたかという点が非常に大きいのだろう。

 酒井の場合は日本人選手が名門のキャプテンを務めたことで、いわれのない言われないバッシングを受けたり、容赦ない批判も浴びたりしたが、そういった経験も強靭なメンタルにつながっているから、日本に戻ってきても遠慮など一切しない。アンドレス・イニエスタやダビド・ビジャ、ルーカス・ポドルスキといった世界有数のタレントを擁する神戸に加入したら少しは物怖じするところがあってもおかしくないが、彼の場合はそんなところはおくびにも出さない。そういった意識の高さも復帰したJリーグで活躍するための重要な条件と言ってもいいだろう。

 今のところ明暗が分かれている今夏の欧州復帰組。だが、2013年1月から半年間ベルギー挑戦に赴いて失敗し、6年以上が経過して30歳になった今季、ブレイクしている永井謙佑(FC東京)のような例もある。今季J1で8ゴールを挙げてFC東京の首位快走の原動力になっており、久しぶりに日本代表復帰した6月のエルサルバドル戦でも2ゴールと目覚ましい活躍ぶりを見せつけている。Jに戻って思うような仕事ができていない宇佐美や井手口にしても、いつどのような軌跡を描くか分からない。彼らにいち早く永井のような時期が訪れ、再び日の丸をつけてプレーするようなレベルに到達してくれることを強く祈りたい。(元川悦子)

●元川悦子/長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。