山下英(やましたすぐる)/1985年1月17日生まれ。石川県出身。名古屋学院大学を卒業後、2007年にプロ野球の独立リーグ「BCリーグ」に所属する石川ミリオンスターズに入団。11年まで投手としてプレーし、5年間で通算29勝を挙げた。左投左打で、現役時代の球速は140キロ。左打者の胸元に食い込むシュートが武器。12年から西武ライオンズの打撃投手を務め、現在8年目。
山下英(やましたすぐる)/1985年1月17日生まれ。石川県出身。名古屋学院大学を卒業後、2007年にプロ野球の独立リーグ「BCリーグ」に所属する石川ミリオンスターズに入団。11年まで投手としてプレーし、5年間で通算29勝を挙げた。左投左打で、現役時代の球速は140キロ。左打者の胸元に食い込むシュートが武器。12年から西武ライオンズの打撃投手を務め、現在8年目。
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15~20分という短時間で100球前後を投げる過酷な仕事だ。 提供/株式会社西武ライオンズ
15~20分という短時間で100球前後を投げる過酷な仕事だ。 提供/株式会社西武ライオンズ

 華やかなプロ野球の世界、選手たちがグラウンドで熱い戦いを繰り広げる陰には、それを支える多くの裏方たちがいる。その存在自体は誰もが知っているが、その実態を知る人は少ない。そんな彼らの日常を紹介する「プロ野球の裏方たち」。今回は西武ライオンズの「打撃投手」を務める山下英(すぐる)さん(34)に話を聞いた。山下さんは独立リーグで5年間投手としてプレーしていた元選手。打撃投手に転向した苦悩や、選手たちとの秘話を語ってもらった。

【過酷すぎる!打撃投手の現場はこちら】

*  *  *

――打撃投手になった経緯を教えてください。

山下:2011年までBCリーグ・独立チャレンジリーグに所属する「石川ミリオンスターズ」の投手でした。NPBからのドラフト指名を目指して5年間プレーしましたが、収入は月に12万円ほど。シーズンオフの冬はバイト漬けで、月に30万円を稼いで貯金をしないと、生活するのもギリギリでした。もう1年続けるか、他の仕事に就職するかで迷っていたところ、26歳のときに埼玉西武ライオンズから声をかけてもらいました。

――現役を退くことに葛藤はありましたか?

山下:未練はなかったです。生活が苦しかったので、この環境で長く続けるわけにはいかないと思っていました。当時の石川の球団社長から「西武から打撃投手の話がきている」と電話があり、「行きます!」と即答しました。

――打撃投手の仕事について教えてください。

山下:フリー打撃では、15~20分という短時間で先発投手並みの100球前後を投げます。現役の時は1時間かけて肩をつくりましたが、今はわずか10分のキャッチボールで準備しなければなりません。打撃ゲージが2か所で投手は2人1ペア。3交代制で投げ、7人いる打撃投手のうち毎試合6人が投げます。慣れるまでは毎日が筋肉痛との闘いでした。肩が重いときも投げなくてはいけない。ちなみに、打撃練習中に外野で打球を捕っているのは、投げ終えた打撃投手や外国人選手の通訳などです。この仕事も、疲れている時にはしんどかったりします。

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打撃投手が死球を出してしまうと…