ファンに「かわいい」と褒められても「ブス専なんだな」としか思えず、異性に告白されても「自分なんかを好きになってダサい」と思ってしまう。高校時代は家にいられずに友だちの家を転々としたこともあったが、国公立大学に合格し、授業料を自分のアルバイト代でまかなって卒業。この春、就職した。
「会社で怒られても、具合が悪いときに電車で席を譲ってもらえなくても『ブスだからかな』ってすぐに顔のせいにしてしまう。わかっているんです、問題は私の中にある。ずば抜けた才能とか何も無くて、顔に執着するしか無かったのかな……。整形してからは『やったのにその程度か』って思われるんじゃないかという恐怖も出てくるし、今もツイッターで美容垢を400ぐらいフォローしていて、時間があれば(顔を)いじりたい。けど、(整形を)何度かやって昔よりは可愛くなったはずっていう自信もあるし、年をとって諦めというか、もう受け入れなきゃいけないなと思うようになりました」
日本人の美容の関心が、極端に顔に偏っている――。日本美容外科学会もそう指摘する。世界では豊胸など体型に関するものが過半数を占め、顔の施術は4割なのに、日本では顔の手術が9割に達する。中でも二重まぶたにする重瞼術が最も多く、全体の4割を占めているのが現状だ(同学会による2017年中の手術数の調査)
冒頭のAさんは、娘が幼いころ「いつか二重になるよ」と周囲に励まされたという。
「赤ちゃんでも二重と一重は全然印象が違うんです。でも、かわいそうと思ったのは一瞬。どんな目でも我が子は可愛いというのが親の本音ですよ」
それでも娘の意志を尊重したのは、3つ上の長女の経験があったからだ。成績優秀で中高一貫の進学校に進んだが、人間関係の悩みから一時リストカットをするようになった。傷を隠す長女を羽交い締めにして、カッターを取り上げたこともあった。
「もったいないよ、きれいな手なのに」
そう言いながら、親と言えど、子どもの心の内をすべてを知ることはできないと痛感した。それなら前向きでいられるようにサポートしよう。それが自傷行為が続いた半年間の教訓だった。二重になった次女が、手術室から出てきたときの満足そうな顔を見て、間違っていなかったと確信したという。